【現地取材】みちのくダービーに山形が仙台に4-1で大勝利!渡邉監督有言実行の大勝に導く

7月1日午後7時30分にモンテディオ山形の本拠地NDソフトスタジアム山形で開催されたみちのくダービーは、山形がベガルタ仙台を4-1で大勝した。

前身のNEC山形サッカー部が現在のクラブ名に改称してから、史上最多得点でベガルタ仙台を打ち破ってみせた。

筆者はみちのくダービーを現地取材し、山形の歴史的勝利を体感してきた。

夏の暑さに匹敵する熱気

夏の夜に行われた決戦は、外気の暑さに劣らないほどに会場は熱気に包まれていた。

公式戦通算43回目の決戦に青と白のユニフォームを身にまとった山形サポーターと、ゴールドのユニフォームを着た仙台サポーターで会場は溢れていた。

前回対戦は5月13日に仙台の本拠地ユアテックスタジアム仙台で開催され、仙台は2-1で勝利を収めていた。

今回は山形本拠地での開催なだけに山形サポーターは「前回対戦で仙台に負けたから、きょうは絶対に勝ちたい!選手を信じて応援します!」と勝利を切望していた。

対する仙台サポーターは「山形に勝つ以外の結果はありえない。きょうも勝ってシーズンダブル!それ以外ありえません!‪」と2011年シーズンの再現を望んでいた。

試合前はお互いに応援チャントを熱唱し、会場のボルテージは最高潮に達した。

試合開始の笛が吹かれると、前半5分にバックパスを受けた仙台GK小畑裕馬のパスを山形FW藤本佳希が右足で奪うようにダイレクトでゴールに突き刺して先制。

山形が試合を優勢に運び、前半40分にはパスワークで相手の守備の隙間を突く形で再び藤本が左足で追加点を奪った。

仙台も後半2分にFWホ・ヨンジュンが頭で1点を返すも、藤本が後半9分、後半13分に立て続けにゴールを奪って計4得点の活躍で仙台を粉砕した。

公式戦は8年ぶり、リーグ戦は13年ぶりのダービー勝利

この勝利は山形サポーターにとって待ち焦がれた勝利だった。

山形は公式戦のダービーで仙台に勝利した試合は、2015年5月27日のルヴァン杯の2-1以来となる。リーグ戦はさかのぼれば2010年7月13日の3-1以来だ。

長年宿敵に勝てていなかったが、試合前に渡邉晋監督を取材した際、「もしジンクスというものがあるとしたら、破るためにあると思う」と力強く話していた。

有言実行の圧勝—。渡邉監督は試合後の会見で

サポーターに対する前に、選手へのアプローチとして「過去は変えられないけど、未来が変えられる」という話をきょうしました。

変えられるものに対して、エネルギーを注いでいこう。我々が新しい歴史をつくろうと、そういうような話をしました。

公式戦に関して言えば、8年ぶりなのかな。でもリーグ戦に13年ぶりというところを数字としては選手に強調して、13年ぶりに勝利をすることで、「新しい歴史の1ページを2023年の俺たちで作っていこうぜ」という話をして、選手がそれを意気に感じたかは後で聞いてみてください。

過去にもそういうようなアプローチをして勝てていないと言われていた。スタジアムで勝ってきた経験もありますから、そういうような働きかけで選手が意気に感じてやってくれたのであれば、うれしいなと思います。

実際、それで我々が勝ち得た結果というものがサポーターに届いて、彼らはあれぐらい喜んでくれるのは、私も本当に一サッカー人としてこんなに嬉しいことはないです。

それが隣県のライバルのチームであれば尚更でしょうし、今日1日はサポーターと一緒に、選手と一緒に、コーチングスタッフと一緒に、フロントのスタッフと一緒に、勝利というものを味わいたいなと思います。

とコメントした。

歴史的な大勝劇に会場は、試合後もサポーターの歓声に包まれていた。

元仙台の田中渉が古巣を打ち破る

今季から仙台から山形へ完全移籍した田中渉は、トップ下のポジションで先発。後半の3得点目と4得点目で起点となる活躍を披露した。

試合前に田中は「(古巣との対戦は)物すごく楽しみですし、いまの僕がこれだけ成長したというころは見せたいですね」と燃えていた。

攻めれば正確なパスでチームの攻撃を活性化し、守れば球際を労を惜しまないランニングで相手の起点作りを阻止した。

試合後に田中は

素直にうれしいです。サポーターのみなさんも(前回対戦で)すごく悔しい思いをしたと思います。

僕たち全員も悔しい思いをしましたので、ホームなので絶対負けられないと思っていた。

そこの部分がプレーに出たと思います。

と前回対戦のリベンジ成功に歓喜していた。

藤本はダービー通算最多得点に

この日の殊勲のヒーローは間違いなく藤本だ。右足、左足、右足、ヘディング(得点経過順)と局面に合わせた最適なシュートで4得点を奪取。

ダービー通算6得点で、山形側のみちのくダービー史上最多得点者(仙台も含めるとMF梁勇基の6得点と並んで最多タイ)となった。

藤本は「(1試合4得点は)アマチュア時代以来じゃないですかね。中々ないです。(母校の明治)大学でもないですね」と目を丸くしていた。

プロになってから最多得点は2ゴールで、ハットトリックも未達成だった。

この日の爆発に「ダービーはサポーターの雰囲気が試合前から違うんですよ。だから一番勝ちたい試合、命をかけているじゃないけど、生きるか死ぬかみたいな感じを試合前に感じるので、それはより僕の力を引き出してくれている要因かなと思います」と力強く話した。

今季J2で1試合4得点を達成した選手は藤本のみ。この負けられない一戦でゴールを重ねたヒーローに、サポーターは惜しみない拍手を向けていた。

今季計7得点の“ダービー男”藤本は「ダービーの長い歴史を僕たちは知らない部分もあるんですけど、サポーターの皆さんはそれを知っていて、僕らはその思いを背負ってこの試合に勝つ、それだけ意識して。ものすごくうれしいです」と笑顔を見せた。

通算43回目のダービーを歴史的な勝利で終えた山形。今季は序盤戦で8連敗を喫し、5連敗目にピーター・クラモフスキー監督(現・FC東京監督)の契約解除と苦境に立たされた。

それでも渡邉監督がチームを立て直し、第16節大分トリニータ戦から第20節いわきFC戦まで5連勝と、チームを復活へと導いた。

ダービーの勝利により順位を9位に上げて、J1プレーオフ圏内も視界に入ってきた。

【関連記事】みちのくダービー直前特集!モンテディオ山形渡邉晋監督が決戦前に古巣仙台とのダービーを語る!

決戦の勝利で喜びに沸いたサポーターに、次は9シーズンぶりのJ1昇格を届けてみせる。

© 株式会社ファッションニュース通信社