終盤に速さを発揮したローヴェが優勝。BMWの勝利は5年ぶり25回目【スパ24時間 決勝レポート】

 ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで7月1日(土)にスタートした『クラウドストライク・スパ24時間レース』の決勝レースが、現地2日(日)16時30分にフィニッシュを迎え、ローヴェ・レーシングの98号車BMW M4 GT3(フィリップ・エング/マルコ・ウィットマン/ニック・イェロリー組)組が総合優勝を飾った。

 予選では10年ぶりにプロカップカー以外のマシンが総合ポールポジションを獲得した2023年のスパ24時間。IGTCインターコンチネンタルGTチャレンジとファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ(GTWCヨーロッパ)両選手権のシーズンハイライトとなる同イベントは“世界三大耐久レース”のひとつでもある。

 そんな今大会の決勝レースは、雨上がりのダンプ路面となったスタート直後にポールシッターの20号車ポルシェ911 GT3 R(フーバー・レーシング)が最初の1時間を支配したが、ブロンズカップエントリーのこのクルマはドライバー交代にともない2時間目に順位を下げた。

 その後トップに立った63号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2(GRTグラッサー・レーシング・チーム)と51号車フェラーリ296 GT3(AFコルセ)が相次いでトラブルに見舞われポジションを失うなか、次第に上位陣の顔ぶれが揃い始める。レースをトップで折り返した40号車アウディR8 LMSエボII(アウディスポーツ・トレゾア・オレンジ1)はその1台であり、同門の17号車アウディR8 LMSエボII(シェラー・スポーツPHX)をはじめ、32号車BMW M4 GT3(チームWRT)、92号車ポルシェ911 GT3 R(マンタイEMA)、98号車BMW M4 GT3(ローヴェ・レーシング)、88号車メルセデスAMG GT3(アコーディスASPチーム)などがピットタイミングごとに順位を入れ替えながらトップ争いを繰り広げる。

 このうち地元ベルギー籍のチームWRT32号車は、12時間を迎える直前に同じくBMW陣営の998号車M4 GT3(ローヴェ・レーシング)から追突を受け、時速200キロを超える速度でクラッシュ。幸いにもドライバーは無事だったが、総合5番手と6番手につけていた2台のBMWはそろってリタイアとなってしまった。

 レース後半戦では40号車と17号車によるアウディ同士のトップ争いが長く続き、この2台は幾度もコース上で順位を入れ替えながら接近戦を繰り広げた。

 一方、別シークエンスでレースを進めてきた98号車BMWは、18時間目のFCY中にピット作業を行ったことで利益を得ることに成功し、残り6時間の時点でライバルを逆転して実質的なレースリーダーとなった。

 その後ローヴェの98号車はレース終盤に向けてペースを上げ、2台のアウディやASPの88号車メルセデス、トラックリミット違反で30秒ペナルティを受けた92号車ポルシェなどのライバルたちとの間にギャップを築いていく。20時間目にアンダーカットでアウディ勢をかわして2番手に浮上した88号車と首位を走る98号車のタイム差は、レース残り時間が2時間となった段階で約16秒に拡がっている。

総合2位となった88号車メルセデスAMG GT3(アコーディスASPチーム) 2023スパ24時間

■今年は“スパウェザー”なし。終盤のSCもなくクリーンな結末に

 その88号車はレース終盤に17号車アウディと総合2番手争いを展開する。テール・トゥ・ノーズの僅差のまま迎えたスタートから23時間ポイント前のラストピットでは、ライバルに先んじて作業を行い辛くも順位を守ったが、最後の1時間もAMGのジュール・グーノンとアウディを駆るニッキー・ティームのバトルが続く。さらに、最後の30分にはケビン・エストーレがドライブする92号車ポルシェもこのバトルに追いつき、表彰台を懸けた三つ巴の戦いに発展した。

 これを尻目に一時22秒以上のリードを築いた98号車は、最後はエングによる余裕の走りでトップチェッカー。ローヴェ・レーシングにとって2020年以来3年ぶり、BMWにとっては2018年以年5年ぶり、他メーカーの追随を許さない通算25回目の総合優勝を飾った。エング/ウィットマン/イェロリー組はGTWCヨーロッパ・エンデュランス・カップ開幕戦モンツァ以来のシーズン2勝目をマークしている。

 ファイナルラップまで1秒前後の戦いが繰り広げられた2番手争いは、グーノン駆る88号車メルセデスに軍配が上がった。また、3番手と4番手も順位は変わらずティームの17号車アウディ、エストーレの92号車ポルシェの順でチェッカーを受けている。総合5位はルトロニク・レーシングの96号車ポルシェ911 GT3 Rだ。

 ゴールドカップはオプティマム・レーシングの5号車マクラーレン720S GT3エボ(サム・デ・ハーン/トム・ギャンブル/チャーリー・ファグ/デーン・マクドナルド組)がクラス優勝を果たし総合では10位に入った。今大会のポールシッターとなった20号車ポルシェ(アンタレス・オー、ティム・ハイネマン、ヤネス・フィティヤ/マッテオ・カイローリ組)は総合13位でブロンズカップのウイナーに。

 シルバーカップでは総合17位でフィニッシュしたGRTグラッサー・レーシング・チームの85号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2(クレメンス・シュミッド/ベンジャミン・ヒテス/グレン・バン・ベルロ組)が、プロ・アマカップはサン・エナジー1レーシングの75号車メルセデスAMG GT3(マーティン・コンラッド/アダム・オシエカ/ニッキー・キャツバーグ/チャズ・モスタート組)が勝利を収めている。75号車で総合22位/クラストップチェッカーを受けたキャツバーグは、ニュルブルクリンク24時間(フレカデッリ・レーシング/フェラーリ296 GT3)とル・マン24時間(コルベット・レーシング/シボレー・コルベットC8.R)に続き、今季3度目の24時間レース制覇となった。

 伝統のスパ24時間で第4戦が終了したGTWCヨーロッパは次戦、7月15~16日にイタリアのミサノで第5戦(スプリントカップ第2戦)が行われる。IGTCの次戦は第3戦インディアナポリス8時間となり、こちらは3カ月後の10月5~7日に開催予定だ。

総合3位となった17号車アウディR8 LMSエボII(シェラー・スポーツPHX) 2023スパ24時間
惜しくも表彰台を逃した92号車ポルシェ911 GT3 R(マンタイEMA) 2023スパ24時間
40号車アウディR8 LMSエボII(アウディスポーツ・トレゾア・オレンジ1) 2023スパ24時間
ゴールドカップを制した5号車マクラーレン720S GT3エボ(オプティマム・レーシング
シルバーカップで優勝した85号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2(GRTグラッサー・レーシング・チーム) 2023スパ24時間
ブロンズカップでポール・トゥ・ウインを達成した20号車ポルシェ911 GT3 R(右:フーバー・モータースポーツ)と一時総合トップを走った54号車ポルシェ911 GT3 R(左:ダイナミック・モータースポーツ) 2023スパ24時間
プロ・アマカップを制した75号車メルセデスAMG GT3(サン・エナジー1レーシング) 2023スパ24時間

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