15世紀建立の古刹「身近なお寺」目指し、境内に手作りバスケコート 今年から「フリースロー大会」も 兵庫・丹波

境内にある手描きのバスケットボールのコート。放課後や休日は子どもたちが遊ぶ=瑞雲寺

 山あいの古刹(こさつ)に白線で手描きされたバスケットボールのコート-。兵庫県丹波市青垣町東芦田にある曹洞宗瑞雲寺が、境内にバスケットボールができるスペースなどを設け、地域の子どもらに開放している。法要や参拝だけでなく、遊びや憩いの場にもなる「身近なお寺」を目指す。スポーツやダンス、音楽ライブなども受け入れ、交流の輪を広げていきたいという。(秋山亮太)

 同寺は1441年、小室城の芦田八郎金猶が、一族や主筋にあたる細川満元を弔うために建立したとされる。安土城や姫路城などで知られ、寺院では珍しいという「穴太積み」の石垣が見られる寺でもある。

 境内を子どもが遊びに来られる場所にする取り組みは、4、5年ほど前から続けている。「『寺子屋』と呼ばれ、学び、遊ぶ所だった環境を大切にしたい」という渡辺俊明(しゅんみょう)住職(73)、崇俊(そうしゅん)副住職(36)の考えで、車庫だった小屋に卓球台を置くことなどから始めた。

 バスケットボールのコートは本来駐車スペースで、お盆以外は車が少ないことなどから、ゴールなどを置いて、誰でも使えるようにしている。

 数あるスポーツからバスケを選んだのは、崇俊さんが小さい頃から「バスケ好き」で、学生時代には年齢、出身さまざまな同志と集い、汗を流した経験が大きい。「楽しい時間を共有し、人の縁が大きく広がった。お寺も同じような一面があっていい。大切にするあまり、寄りにくい場にしてはいけない」と話す。

 新型コロナウイルス禍で、取り組みに込める思いは一層深まった。屋内はマスク姿が常となり、過ごし方にもさまざまな制限が加わった。同市内の「アフタースクール」に勤め、コロナ禍の子どもたちを見つめてきた崇俊さん。屋外で遊ぶ子どもらの笑顔に、「大声で笑い、走り回れる安心な場所の大切さを痛感した」という。

 子どもたちの利用に加え、今年からは、バスケ仲間の芦田諒太さん(35)の主催で、大人も参加する「フリースロー大会」が始まった。競技前には崇俊さんが寺や仏教について話す催しで、6月10日の第3回大会には親子連れ約10人が参加。山門に見守られ、白熱の勝負を繰り広げた。

 寺の取り組みや催しの告知は、インスタグラムなどの交流サイト(SNS)で積極的に発信。地元の住民だけでなく、帰省した学生が遊びに訪れるなど、「ご縁の輪」が少しずつ広がっている。

 今後はダンス大会、音楽イベントまで、幅広く受け入れていく方針だ。「未来を担う若い世代から身近に感じてもらい、先人が守ってきた瑞雲寺を次世代につなぎたい」と崇俊さん。境内に響く子どもの笑い声に耳を傾け、「当たり前のように『お寺に遊びに行ってくる』と言ってもらえるようになりたいですね」と笑顔でつぶやいた。

© 株式会社神戸新聞社