「お恵」釜石で心と喉潤し60年 84歳の店主菊池さん、常連と祝福

居酒屋「お恵」の開業60年を祝う常連客と思い出を語らう菊池悠子さん(左)=2日、釜石市大町

 釜石市平田の菊池悠子さん(84)が営む居酒屋「お恵(けい)」が2日、開業60年を迎えた。名物飲食店街「呑(の)ん兵衛(べえ)横丁」でのれんを掲げ、東日本大震災で被災した後は、組合長として仮設店舗での営業再開に奔走。現在は同市大町で、横丁の誇りを胸にカウンターに立つ。人口減に新型コロナウイルス禍と苦境は続くが「どんなに暗い時代でも前を向いて行かなくちゃ」と笑い飛ばす人柄で、街に明かりをともし続ける。

 「還暦おめでとう」「100歳まで続けて」。親富幸(おやふこう)通りにある店に2日、岩手県内外の常連客7人が駆け付けた。リモートで首都圏とつなぎ、ゆかりの大学教授らも参加。「ファンの大阪支部」とする3人で訪れた大阪府吹田市の主婦増田鈴子(れいこ)さん(71)は「毎回、元気をもらいに来ている。全国から人が集まるのはお恵さんの人間力のたまもの」と祝福した。

 お恵は1963年7月開業。釜石市内の百貨店の販売員だった菊池さんが、店主だった友人から頼まれ、店を引き継いだ。当時の釜石は製鉄業で栄え、人口は9万人超。横丁は昼からにぎわい「最年少の店主だったので、とにかくお客さんにかわいがってもらった。1日で一升瓶が15本空いた日もある」と懐かしむ。

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