【ベトナム】HCM市、2Q成長率5.9%に[経済] 観光回復も不動産の停滞重しに

ベトナム南部ホーチミン市の2023年第2四半期(4~6月)の実質域内総生産(GDP)成長率は速報値ベースで5.87%となり、第1四半期(1~3月)から5ポイント余り加速し、全国平均の4.14%を上回った。外国人観光客の急増などを受けてサービス業が8%近く伸び、全体をけん引した。ただ、第1四半期に大幅マイナスだった不動産や建設業の回復の足取りは重く、通年での同市の成長率は目標とする7.5~8%を下回る見込みだ。

ホーチミン市人民委員会によれば、市の上半期(1~6月)の成長率は3.55%だった。サービス業が4.96%、工業・建設業は0.8%、農林水産業は2.14%だった。市の経済の6割以上を占めるサービス業が好調だったことで、全体の成長率が押し上げられた。

人民委は第2四半期のGDPの分野別の内訳を公開していないが、サービス業の成長率は第1四半期を約5.8ポイント上回る7.9%前後と推計される。工業・建設業はマイナス3.6%から約5.2%のプラスに転じ、農林水産業も0.2ポイント改善し、約2.2%となった。

業種別にみると宿泊・飲食業の小売売上高が上半期は36%拡大した。ホーチミン市を訪れた外国人旅行者が3倍に増え、ホテルや娯楽施設ににぎわいが戻った。ただ、サービス業に含まれる不動産・コンサルティングの上半期のGDPは11.58%減と落ち込みが続いている。上半期に休廃業を決めた全国の不動産会社は40%増加した。国内最大市場であるホーチミン市の住宅不況で、事業継続を諦める仲介業者などが相次いでいるようだ。

工業・建設業のうち建設業のGDPは第1四半期は19.8%減だったが、上半期は0.8%のプラスを確保した。民間の不動産投資が冷え込む一方で、ホーチミン市環状3号線など公共事業が建設業を下支えした。上半期の公共投資の支出は90.4%増加した。

■人民委員長「通年で7%弱に」

上半期の実績が低調だったことを受けて、通年目標である7.5~8%成長の達成は困難になった。VNエクスプレスによれば、市人民委員会のファン・バイ・マイ委員長(市長)は6月末の会議で「最良のシナリオでも7%弱だろう」と予測を示した。

通年で7%成長を実現するには、下半期(7~12月)は10%を超える必要があるが、エコノミストのチャン・ズー・リック氏は下半期の成長率を8%程度とみている。市内の縫製・履物や木工加工工場は前年比で3~5割の受注減にあえいでおり、市計画投資局のレ・ティ・フイン・マイ局長は「世界経済の先行きの不透明感は依然として強く、主要国による金融引き締めの影響も受けている。不動産セクターの低迷も続いている」と危機感を示した。

■ハノイは堅調、ダナンはゼロ成長に

最大都市であるホーチミン市がもたつく一方で、首都ハノイ市は堅調な成長を持続している。第2四半期の成長率は5.98%で、第1四半期を0.03ポイント上回った。サービス業は0.71ポイント減速して7.19%にとどまったものの、工業・建設業は1.66ポイント増の4.04%、農林水産業は0.22ポイント増の2.33%だった。

ハノイを含む北部一帯では6月に猛暑による電力不足が深刻化し、各地の工業団地で計画停電が実施されたが、工業への影響は限定的だったようだ。ハノイの6月の鉱工業生産指数は前月を1.4%、前年同月を3.4%上回った。

中部ダナン市の第2四半期の成長率は0.21%にとどまり、前年同期から12ポイント余り、第1四半期から7ポイント近く低下した。サービス業が第1四半期から10ポイント余り低下し0.95%に鈍化したことが響いた。工業・建設業は4.74%減から2.36%減に改善し、農林水産業も0.01%減から2.82%増に回復した。

サービス業に急ブレーキがかかったのは、コロナ禍で停止していた外国人観光客の受け入れ再開による反動が一巡したため。ダナンの成長率は22年第3四半期(7~9月)は32.01%、第4四半期(10~12月)も12.23%と反動による絶好調が続いたことから、今後しばらくは前年を上回る成長の実現は難しいとみられる。

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