マイナ保険証トラブル福井でも続出 無保険扱いで医療費全額を一時負担…全国4番目の対応県から訴え

マイナ保険証の読み取り機器。福井県内の医療機関でもトラブルが相次いでいる

 マイナンバーカードと一体の「マイナ保険証」を巡り、福井県内の医療機関でもトラブルが相次いでいる。患者の保険加入情報がカードに正しく反映されておらず、「無保険扱い」で一時的に医療費の10割負担を求めざるを得なかった事例もあった。政府は来年秋に現行の保険証を廃止しマイナ保険証に一本化する方針。福井県内の開業医は「便利になるどころか、確認などで負担が増している。現場に配慮し慎重に対応を進めてほしい」と訴える。

 厚生労働省によると、マイナ保険証に対応する県内医療機関は1010機関(6月18日現在)あり、全体の88.2%に当たる。割合は都道府県別で岩手、宮崎、山形に次いで4番目に高い。読み取り機器の申し込み状況は94.9%となっている。

 鯖江市のクリニックでは今年5月、国民健康保険から社会保険に変更した患者を受け付けた際、マイナ保険証に変更が反映されていなかった。患者は現行の保険証を持参しておらず、一時的に10割負担を求めた。クリニックの担当者は「マイナ保険証の情報更新が遅れるケースが多く、確認作業に時間がかかる」と指摘する。

 このクリニックは、4月に医療機関のマイナ保険証対応が原則義務化されたのに合わせ、読み取り機器を導入した。マイナ保険証の利用は患者全体の5%程度だが、住所の一部が抜け落ちていたり、氏名のふりがなが間違っていたりと、細かな不備が多いという。

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 昨年4月からマイナ保険証に対応している福井市の中規模病院でも、患者が無保険扱いになる可能性があったトラブルがこれまでに数件発生した。いずれも現行の保険証を持っていたため、10割負担にはならなかったという。患者は高齢者が多く、マイナ保険証の読み取りにも手助けが必要で、担当者は「これまで20秒でできていた受け付けが1分以上かかるようになった」と話す。全国的には別人の情報が誤ってひも付けられたケースもあり、患者から情報が間違っていないかの問い合わせも相次いでいるという。

 厚労省は、マイナ保険証に不具合があっても、当面は患者の自己負担を本来求める3割分とし、初めてマイナ保険証で受診する際や加入する保険の変更後は、従来の保険証も持参するよう呼びかけるなどの対策を示している。

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 福井県保険医協会の津田武嗣会長は「マイナ保険証は薬の処方や特定健診などの履歴が分かる便利な面もあるが、情報の反映にタイムラグがあるなど課題は山積み。運用は慎重にしていくべきだ」と話している。

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