心臓修復パッチ実用化了承、秋以降に流通開始 福井経編興業「世界の子供を助けられる」

福井経編興業などが開発し、実用化が事実上決まった「シンフォリウム」(同社提供)

 ニット生地製造の福井経編興業(本社福井県福井市西開発3丁目、髙木義秀社長)などが開発した心臓組織手術用の心・血管修復パッチ「シンフォリウム」について、厚生労働省の専門部会が6月29日までに製造販売承認を了承した。近く正式承認され、国による保険適用に関する審査を経て、本格生産と流通開始は秋以降になるとみている。髙木社長は福井新聞の取材に「10年間目指したものがようやく認められた。世界の子供を助けられる」と喜びを語った。

 心臓パッチは帝人(大阪市)、大阪医科薬科大との共同開発で2014年に着手。先天的に心臓に穴があるなどの疾患に対し使われ、既製品で課題となっていた子供の心臓の成長に伴い再手術が必要となるリスクの低減を図る。

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 心臓パッチは、高度な経編技術で体内で分解される糸と分解されない糸を編み込んだものにゼラチン膜を施している。ゼラチンと糸が分解されて細胞組織に置き換わる一方、編み目がほどけることで生地が伸びて心臓の成長に対応する仕組み。19年5月から約30症例の臨床試験を行い、全症例で問題になるような事象は起こっていないという。製造販売に向け、今年3月に申請していた。

 福井経編興業は既に工場内にクリーンルームを設置し、帝人側から発注を受ける形で素材を製造。帝人が後加工を施し販売する。

 同社の心臓パッチ開発計画は、直木賞作家池井戸潤さんの小説「下町ロケット2 ガウディ計画」のモデルにもなった。

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