タイトル防衛に向け、フェラーリの聖地で勝利を狙うトヨタ「今週末も厳しい戦いになると思う」と小林可夢偉

 全7戦で争われる2023年のWEC世界耐久選手権はシーズン後半戦に突入し、第4戦ル・マンを終えてモンツァ・サーキットへ舞台を移す。同シリーズに参戦しているTOYOTA GAZOO Racing(TGR)は、7月7日(金)から9日(日)にかけて、イタリアで開催されるWEC第5戦『モンツァ6時間レース』に、2台のトヨタGR010ハイブリッドで挑む。

 これらのマシンのステアリングを握るのは、ル・マンに引き続き7号車が小林可夢偉/マイク・コンウェイ/ホセ・マリア・ロペス組、8号車がセバスチャン・ブエミ/平川亮/ブレンドン・ハートレー組だ。

 前戦ル・マンでは、大波乱となったレースのなかで果敢にプッシュを続け、32万人もの大観衆が見つめるなかエキサイティングな優勝争いを繰り広げたTGR。結果としてはフェラーリにル・マン100周年という記念すべき優勝を惜しくも攫われたトヨタチームは、その借りを返すべく“跳ね馬”の母国イタリアのモンツァが舞台となる次戦での優勝を目指す。

 6月のル・マンではレース終盤まで51号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)を首位争いを繰り広げ、惜しくも2位フィニッシュとなったブエミ、ハートレー、平川が駆る8号車は、優勝こそ逃したもの、ドライバーズ選手権では3戦を残して25ポイントリードの首位に立っている。

 一方、ル・マンでは他車からの追突によるリタイアという不運に見舞われた可夢偉、コンウェイ、ロペスの7号車は、タイトル争いでの逆転の可能性はかなり厳しいものとなったが、さらなるランキング上位への進出、そしてチームのタイトル防衛のために、モンツァで今季3勝目を狙う。マニュファクチャラータイトル争いにおいては、TGRはフェラーリと18ポイント差の首位につけている状況だ。

 モンツァは、ル・マンに続きシーズンで2番目に平均速度が高いハイスピードサーキットであり、その1周の平均速度は、ハイパーカーでは220km/hを超える。ライバル、フェラーリの“聖地”となっているモンツァだが、トヨタのモータースポーツ史においても特別な場所だ。1992年のモンツァ1000kmレースではジェフ・リースと小河等がドライブするグループCマシン『トヨタTS010』が優勝し、トヨタにとって初となる世界選手権での勝利をもたらした。

 2012年にTGRがハイブリッドマシンでWECに参戦を開始してからは、これまでにモンツァでのレースを2度戦い、2021年には7号車の3選手が優勝を飾っている。2022年は8号車のGR010ハイブリッドが2位フィニッシュを遂げた。

 そんなモンツァで行われるシーズン後半戦のオープニングレースは、7日(金)に2度行われる90分ずつのプラクティスで幕を開ける。8日(土)の午前中に最終プラクティス、午後は予選が行われ、6時間にわたる決勝レースは9日(日)の12時30分、日本時間19時30分にスタートが切られる予定だ。

1周5.793kmのモンツァ・サーキットは、ハイパーカーでの1周平均速度が220km/hを越える超ハイスピードサーキットだ。

■ブエミ「熱狂的なファンの前でレースができるのは素晴らしい」

【ドライバーコメント】7号車トヨタGR010ハイブリッド

●小林可夢偉(チーム代表兼ドライバー)

「ル・マンでは、我々はチームとしてできる限りすべてのことを行い、また、クルマのパフォーマンスを最大限に引き出し、ドライバーも全部出し尽くしました。モンツァでも同様に全力で挑み、良い結果を目指していきます」

「今の我々にとって最優先事項は両チャンピオン防衛であり、フェラーリとのタイトル争いはさらに苛烈になるでしょう。現時点で、(マニュファクチャラーズポイントと8号車のドライバーズ)ポイントでは我々の方が上位にいますが、直近の2戦では彼らの方が速さを見せています。今週末も厳しい闘いになると思いますが、絶対に諦めることなく戦い続け、コンマ1秒を削るためにつねにプッシュし続けます。今大会も大観衆と素晴らしい雰囲気の中での戦いになるでしょうし、レースが楽しみです」

●マイク・コンウェイ

「ル・マンからわずか数週間でまたレースの現場に戻れるのは、すべてを過去のこととして気分を変えられるという意味で悪くはないね。残念ながら我々のチャンピオン獲得は厳しいものとなってしまったけど、これでこれからの目標が純粋に残り3レースでの勝利に絞られたよ」

「まずはモンツァで表彰台の中央に立てるようハードにプッシュしていくよ。ふたたびレースを戦うのが楽しみだね」

●ホセ・マリア・ロペス

「モンツァでレースを戦うのは本当に楽しいんだ。いくつかの高速コーナーと、素晴らしい雰囲気を持つ昔ながらのコースで、そういう意味ではル・マンに似ているね。モンツァではWECでの僕のキャリア初期からこれまで多くの良いレースを戦っていて、なかでも2021年のモンツァ戦の勝利がその年のドライバーズチャンピオン獲得につながったから、最高の思い出の場所でもあるんだよ」

「そして、昨年も我々のクルマは速く、アクシデントに見舞われるまではレースを支配していたんだ。今年はこれまでよりも厳しい戦いになるだろうけど、良いレースができると思うよ」

【ドライバーコメント】8号車トヨタGR010ハイブリッド

●セバスチャン・ブエミ

「モンツァでレースを戦うのが楽しみだよ。とくに今年は、これまで以上に特別な雰囲気になるだろうね。僕自身、レースキャリアの中でイタリアで過ごしていた時間が長いから、イタリアに戻れるのは嬉しいし、ファンのみんなに会えるのも楽しみだ」

「もちろん今年は他のチームへの応援が大きいとは思うけど、熱狂的なファンの前でレースができるのは素晴らしいことだよ。チャンピオン争いも僅差になってきて、残りのレースすべてが重要だから、この週末も全力で挑むよ」

●ブレンドン・ハートレー

「ル・マンが終わってからわずかな時間でチャンピオン争いへと意識を切り替えなくてはならないけど、チームはモンツァからの今季残り3戦へ向け闘志を燃やしているよ。フェラーリの速さはよくわかっているし、簡単にはいかないだろうね」

「でも、我々もル・マンでファイティングスピリットをしっかり示したし、モンツァでは表彰台の中央に上る決意で臨むよ。完璧なレースウイークを戦う必要があることはわかっているし、挑戦への準備もできている」

●平川亮

「大変なレースだったル・マンからわずかなインターバルでまたGR010ハイブリッドに乗れるのは嬉しいです。もうル・マンは過去のことで、我々は強くなって戻ってきます。モンツァはよく知っており、8号車で昨年2位に入っていますし、数年前にはELMSヨーロピアン・ル・マンシリーズでも勝ったことがあります」

「非常にハイスピードで走っていて楽しいコースですし、僕たちに合っているコースだと感じます。このレースウイークも全力でクルマの改良を続け、上位を争えるよう頑張ります」

WEC第5戦モンツァ6時間の決勝レースは7月9日(日)12時30分(日本時間19時30分)にスタートが切られる。

© 株式会社三栄