世界遺産の推薦手続き「彦根城など優先して進める」文科相、今年度は推薦見送り

【資料写真】彦根城(滋賀県彦根市)

 永岡桂子文部科学相は4日午前の閣議後の記者会見で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産登録を目指す暫定リストのうち、「彦根城」(滋賀)と「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」(奈良)の推薦手続きを優先して進めることを正式に発表した。ただし提案内容見直しなどのため「今年度の推薦は見送る」とした。

 永岡氏は会見の冒頭、「長きにわたって世界文化遺産推薦に向けて努力を継続されてきた関係者に敬意を表したい。文化審議会の意見が取りまとめられた。彦根城については暫定リスト記載から長期間経過し、ICOMOS(国際記念物遺跡会議)の評価軸が多様化していることから、事前評価を経て提案見直しや推薦可否を検討することになる。両件どちらかの推薦優先順位を決定したものではない」と述べた。

 推薦する候補は国の文化審議会が選ぶ。彦根城の登録手続きについて政府は、ユネスコ諮問機関が各国の推薦前に審査・助言できる新制度「事前評価」を活用する考えで、こちらは期限の9月15日までに関連書類を提出する方向。新制度は今年から導入された。一方、高松塚古墳などで構成する飛鳥・藤原は従来プロセスで申請する方針。

 滋賀県の三日月大造知事は「登録実現までに少なくとも約4年の期間が必要になることを意味する。国内推薦についても決して予断を許すものではないが、新たな一歩を踏み出す機会をいただけると前向きに受け止め、彦根市とともに国と相談しながら今後の対応を検討していきたい」と述べた。4日の県議会6月定例会議の一般質問で答弁した。

 彦根城は、日本が世界遺産条約を締結した1992年当初から、国内候補を記載した「暫定リスト」(現在5件)に名を連ねる。ただ、翌93年に登録された姫路城とは城郭として異なる独自の普遍的価値を見いだす必要があり、滋賀県と彦根市は2020年3月に推薦書の原案を文化庁に提出していた。

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