<社説>石垣市の答弁対応文書 議員の選別は許されない

 石垣市が野党議員を軽視するような文言を含む文書を作成して新任管理職に配布していた。市民の代表である議員を選別し、差別することにつながりかねない。市は差別の意図を否定するが、議会は担当部長の「適切な処分」を求める決議も可決した。決議を重く受け止め、戒めとすべきだ。 文書は4月に庁内で開かれた新任課長意見交換会に向け翁長致純総務部長が作成した。議会答弁の作成業務が始まる新任の課長8人に対して配布された44ページの資料だ。

 議会への答弁について「一般的に与党であれば前向き・積極的な答弁となり、野党であればその反対となります」と記した。議会答弁の仕方をまとめた公務員向けの書籍からの引用だという。

 一般的に野党の質疑は行政執行部に批判的ではある。これは議会のチェック機能に基づくもので執行部は与野党を問わず平等に応ずるべきだ。

 文書を字義通りに受け取れば、与党には質問の意図に沿うような答弁をし、野党にはその反対の対応を取るということになる。

 行政に批判的であれば、ぞんざいな対応を取っても構わないということだ。代表である議員にしてそのような対応であるということは、市政に異論を唱える市民に対しても、同様な態度で向き合ってもよいことになる。

 こうした批判に対して、翁長総務部長は市議会で追及され「そうはならないよう注意喚起で使った」と弁明した。あくまでも戒めるべき対応として挙げたもので、意見交換会では口頭でこういう対応をしないよう説明したという。

 ただ、配布文書は「首長、そして執行機関にとって、その会派が与党か野党かは、極めて重要であり、答弁内容に大きく関わります」とも記し、この次に先の引用文が続く。そのまま読めば野党にはおざなりの答弁対応で構わないと受け取れてしまう。

 石垣市議会では、野党市議が着用するかりゆしウエアのデザインについて、中山義隆市長が「議場にふさわしいのか」と発言した。議場での着用は認められており、議会側が発言を疑問視。市長は一般質問を遮って発言したことを謝罪する?末(てんまつ)があった。

 野党を敵対視するような意識はなかったか。他市町村でも議会への向き合い方をいま一度見直してもらいたい。

 議員から執行部への態度についても、質疑の分を超えたものがあれば問題だ。ハラスメント防止条例を制定している自治体もある。ただ、何がハラスメントに当たるのか、特に議員と執行部の関係性では特定が難しいとの意見もある。議員の質問権に影響することも考えると慎重であるべき問題だ。

 与党の立場でもチェック機関の一員である。十把ひとからげに同意ということにはならないはずだ。議会側もその権能と果たすべき役割をいま一度振り返ってもらいたい。

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