【深掘り】「手薄」な太平洋で中国監視へ 北大東島に空自レーダー 歓迎、戸惑い、警戒感

 防衛省は北大東村への航空自衛隊の移動式警戒管制レーダー配備に向けて手続きを進めている。太平洋側が「手薄」(防衛省関係者)となっている状態を解消して「隙のない警戒監視・情報収集の態勢」(青木健至報道官)を構築する狙いがある。村や村議会による誘致に応じた格好だが、急速に進む配備計画に戸惑いの声も漏れた。政府が防衛体制強化を進める県内全体への影響も想定され、県関係者は警戒感もにじませている。

 防衛省の念頭には、中国の海洋進出の活発化がある。防衛省によると、中国軍の空母「遼寧」はたびたび沖縄本島と宮古島の間の公海を抜け、太平洋側で軍事訓練を実施している。2022年には遼寧で艦載戦闘機やヘリが300回を超える離着陸を繰り返した。ロシアとの共同飛行も実施している。

 防衛省関係者は「中国から向かってくる場面を監視する『目』はそろっている。太平洋側が手薄で、南西諸島を抜けた後や太平洋側で行動した後に戻ってくる場面を押さえることができる」と語った。

 北大東へのレーダー設置は主に中国軍の活動に関するデータ収集を目的としているとみられる。一方、中国が定める「第一列島線」を抜けて太平洋に進出する行動は米国にとっても脅威となっており、レーダー設置は米国にも好都合だ。

 誘致に携わった村関係者は「大東地方は、自衛隊なくして成り立たない。急患搬送などをしてもらい、親近感を持っている。天候が悪い時に自衛隊がいてくれれば安心だという思いが多くの島民にある」と歓迎した。一方、戸惑いの声もある。別の村関係者は「大半の島民はよく分からないままに計画が進んでいる」と指摘した。

 県基地対策課は4日、防衛省に説明会開催の事実関係や調査結果などについて問い合わせたが、同日中に回答はきていない。

 県関係者は、議会が誘致決議をしていることを念頭に「(県としても)即座に反対するという話ではないだろう」と語った。ただ、陸上自衛隊与那国駐屯地では、当初計画されていた沿岸監視部隊に加え、地対空ミサイル部隊を追加配備する計画が進められ、地域で懸念を呼んでいる経緯もあることから、同関係者は「状況を注視したい」と話した。

 (明真南斗、岩崎みどり、知念征尚)

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