【連載コラム】第19回:球宴出場メンバー発表 選手間投票の「次点繰り上げ制度」は廃止してもいいのでは?

日本時間7月3日、オールスター・ゲームの出場メンバーが発表されました。今年のオールスター・ゲームは22年ぶりにシアトルで開催され、マリナーズの本拠地T-モバイル・パークが「ミッドサマー・クラシック」の舞台となります。また、日本時間7月5日には故障者リスト入りしているアーロン・ジャッジ(ヤンキース)、マイク・トラウト(エンゼルス)、ヨーダン・アルバレス(アストロズ)、シェーン・マクラナハン(レイズ)、クレイトン・カーショウ(ドジャース)の代替選手も発表。前半戦の最終日に登板する先発投手も基本的には「登板不可」という扱いで出場を辞退することになるため、投手陣はまだメンバーが入れ替わる可能性もありますが、少なくとも野手陣に関しては、新たな故障者が発生しない限り、出場メンバーが確定したと言って差し支えないでしょう。

さて、オールスター・ゲームの先発出場メンバーはファン投票によって決定されますが、投手と控え野手は選手間投票とMLB機構のコミッショナー事務局の選考によって決められます(監督推薦は2017年に廃止)。各リーグのロースター32名のうち、9名がファン投票、17名が選手間投票、残りの6名がコミッショナー事務局という内訳になっています。

個人的にずっと気になっているのが選手間投票における「次点繰り上げ制度」です。選手間投票で1位になった選手がすでにファン投票で選出されている場合、選手間投票の次点の選手が控えとしてオールスター・ゲームのメンバー入りを果たします。今年の場合はブラディミール・ゲレーロJr.(ブルージェイズ)など14人が次点繰り上げによるオールスター・ゲーム選出でした。ただし、そのなかにはア・リーグ二塁手部門で118票しか獲得できなかったウィット・メリフィールド(ブルージェイズ)やア・リーグ指名打者部門で84票しか獲得できなかったブレント・ルーカー(アスレチックス)のような選手も含まれます(二塁手部門1位のマーカス・セミエンは547票、指名打者部門1位の大谷翔平は484票)。各ポジションの控えを必ず確保するために「次点繰り上げ制度」が採用されているようですが、僅差の2位ならともかく、大差をつけられた2位の選手が「選手間投票枠」でオールスター・ゲームに選ばれることについては「本当にそれでいいのか?」と疑問に思います。

また、選手間投票に多くの枠が取られているため、コミッショナー事務局の選考で決まる枠は各リーグ6名だけです。しかも、この枠は「各球団から最低1人は選出する」という条件を満たすために使われます。今年の場合は10球団がファン投票と選手間投票で1人も選出されなかったため、コミッショナー事務局はまずその10球団から1名ずつを選ばなければなりませんでした。さらに、ポジションの制約もあり、ファン投票と選手間投票ですでに各リーグ18名の野手が選出されているため、コミッショナー事務局は各リーグ2名までしか野手を選べません。今年のア・リーグの場合、その野手2名の枠にサルバドール・ペレス(ロイヤルズ)とルイス・ロバートJr.(ホワイトソックス)が入ったため、レッドソックス(ケンリー・ジャンセンが選出)、タイガース(マイケル・ロレンゼンが選出)、マリナーズ(ルイス・カスティーヨが選出)の3球団からは投手を選ばざるを得ませんでした。

日本のように選手間投票も1位のみ選出(=次点の繰り上げをしない)とすれば、コミッショナー事務局がより多くの枠をフレキシブルに選考できるようになります。選手間投票の扱いについては、次点を繰り上げない日本のやり方のほうがいいのではないかと感じています。

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