社説:景況感改善 好循環にもつなげたい

 景気浮揚の手応えは、1年9カ月ぶりだという。

 日銀が発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)で、代表的な指標である大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が3月の前回調査より、4ポイント上昇してプラス5となった。

 DIは、業況が「よい」と答えた企業の割合から、「悪い」とする割合を引いた数値である。これが2021年9月以来、7四半期かかって、ようやく改善した。

 日銀京都支店の管内短観でも、京滋企業のDIが前回比で2ポイント増のプラス9となっている。

 日本経済が新型コロナウイルス禍の影響から抜け出し、見通しが明るくなり始めたといえよう。

 調査において大企業製造業の景況感は、全16業種のうち自動車など10業種で改善した。

 このうち食料品や石油・石炭製品は、ロシアのウクライナ侵攻や円安に伴うコストの上昇分を、価格転嫁できるようになったのが大きく寄与したとみられる。

 自動車は、一時は深刻だった半導体不足が緩和され、生産台数が回復した。これが、鉄鋼などにも波及したようだ。

 宿泊・飲食サービスなどの大企業非製造業に目を移すと、DIは3ポイント上昇のプラス23で、5四半期連続で改善している。コロナ感染症の5類移行で、経済活動が元通りになりつつある。インバウンド(訪日客)も増加に転じ、消費を呼び戻したのだろう。

 ただ、このまま推移すればよいのだが、3カ月後の先行きについては景況感の後退が懸念されている。

 大企業製造業のDIは、4ポイント増のプラス9が見込まれるものの、大企業非製造業が3ポイント下落のプラス20、中小企業が1ポイント減のプラス4にとどまった。

 要因の一つに、海外経済の減速傾向があるとされる。

 度重なる利上げで、欧米の景気が今後、縮小するとの見方が強まっている。中国経済の回復の足取りも鈍く、輸出企業の業績に対する不安が高まっている。

 人手不足の深刻化も大きな要因である。特に大企業非製造業では人材の不足感が際立っており、回復した需要を取り込めない可能性が指摘されている。

 価格転嫁で得た収益を賃金に反映させて人手の確保を図るとともに、物価高に苦しむ家計を潤し、消費を拡大させたい。こうした好循環を促す対応が、政府・日銀に強く求められる。

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