マイナ保険証「トラブルあった」6割 栃木県保険医協会、医師調査

栃木県庁

 マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」を巡り、栃木県保険医協会が会員医師、歯科医師に行ったアンケートで「トラブルがあった」との回答が約6割に上ったことが、5日までに分かった。他人情報にひも付けられていた事例が2件あったほか、保険証としての確認ができず医療費の10割負担をいったん患者に請求せざるを得なかった事例もあった。全国でトラブルが相次ぐ中、アンケートでも来年秋の保険証廃止方針を見直すよう求める声も上がった。

 マイナ保険証は、医療機関が「オンライン資格確認」システムを導入し、読み取り機(カードリーダー)を設置していれば利用できる。患者がマイナ保険証をリーダーにかざし、顔認証か暗証番号入力で本人確認を行う。

 アンケートは同協会会員医師、歯科医師の計810人に、5月25日~6月26日に実施。回答は170件あり、回答率21.0%だった。

 資格確認システムを運用しているのは142件で、全回答の83.5%。運用しているとの回答のうち、トラブルがあったと答えたのは79件だった。

 トラブルの内容は、マイナ保険証の「読み取りができない」が60件で、このうちリーダーなど機材の不具合が37件、カードの不具合が23件だった。「(無効、該当資格なしなど)保険者情報が正しく表示されない」が59件。「他人の情報にひも付けられていた」のは2件あった。

 転職などの保険証の変更情報がマイナ保険証へ反映されるのが遅れるなどして「該当資格なし」と表示されるケースが多かった。操作する患者への支援などで「スタッフの負担が増えた」という声も複数あった。

 トラブルの対処法は「(現行の)保険証で確認する」が最多。患者が保険証を持参しておらず「いったん10割負担を請求した」とする回答も9件あった。同様の事例は全国でも相次ぎ、厚生労働省は窓口負担を本来の3割として事後的に確認するほか、保険証も持参するよう呼びかける対策を決めている。

 マイナ保険証移行については、「時代の流れ」「便利な面もある」と肯定的な見方があった一方、「健康保険証の廃止は時期尚早」との意見も寄せられた。「対応できないため保険診療を中止する」との回答もあった。同協会によると、高齢の医師がオンライン化を機に閉院を決断するケースがあるという。

 同協会担当者は「オンライン資格確認システム導入の義務化によって医療現場で混乱が生じている。マイナカードへの信頼が損なわれている今、一度立ち止まって万全な態勢を整えてほしい」と話した。

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