ハピラインふくい厳しい経営予想…鍵を握る新駅 福井―森田間など3カ所、小川俊昭社長インタビュー

一日も早い新駅設置を目指すと語る小川俊昭社長=福井県福井市大手2丁目のハピラインふくい
ハピラインふくいの概要

 来春の北陸新幹線福井県内延伸に伴い、JR北陸線の運行を引き継ぐ第三セクター「ハピラインふくい」。1日当たりの利用者数目標は、新型コロナウイルス禍前の北陸線県内区間の約1万9千人を上回る2万人を掲げる。「輸送密度」(1キロ当たりの1日平均乗客数)が富山、石川両県の並行在来線と比べて低く、厳しい経営環境が予想される中、小川俊昭社長は福井市内の新駅設置について一日も早い事業化を目指す考えだ。

 厳しい経営見通しを踏まえて、普通運賃は開業1~5年目は現行の1.15倍程度、6年目以降は1.20倍程度に引き上げる。それでも2034年度末までの累積赤字を約70億円と試算。収支不足を補塡するため福井県と沿線7市町が拠出し設置する計70億円の経営安定基金から、毎年度の収支不足を補うスキームだ。

 小川社長「できる限りコスト縮減を図りながら安全かつ安定した運行に努め、サービス向上を図りながら利用者増加を目指していく。当社は本県の背骨に位置するような幹線鉄道で地域に欠かせない公共交通だ。国には開業後の運営費に関し、財政支援措置を求めていく」

 新たな利用者を獲得する上で有効な手段と見込まれるのが新駅だ。福井―森田間、武生―鯖江間、王子保―武生間の3カ所で開設を予定している。

 小川社長「最も進んでいる王子保―武生間は本年度から詳細設計や用地買収に入り、来春の開業後直ちに着工し、25年春の武生商工高校ワンキャンパス化前の供用開始を目指す。武生―鯖江間はサンドーム福井付近で予定するが、鯖江駅東側の新たな改札口や駅前広場整備を優先する。福井―森田間は近町踏切近く(福井市高木町・高木2丁目)に設けるが、周辺の市道整備を先行しないと新駅設置後の交通渋滞が懸念される。福井市が市道整備の事業費やスケジュールを検討しており、協力して一日も早く事業化できるよう進めていく」

 北陸新幹線県内延伸後は、駅からの移動手段としての役割を担う。石川県の「IRいしかわ鉄道」、富山県の「あいの風とやま鉄道」はもとは同じJR北陸線で、レールは1本でつながっている。ハピラインふくいとIRいしかわ鉄道が相互乗り入れするため、福井―金沢間は両社の列車が運行するが、3社の連携も重要だ。

 小川社長「新幹線との乗り継ぎをスムーズにするなど、他の地域鉄道やバス事業者と連携しながら2次交通としての役割を果たしていきたい。来年1月にはダイヤの詳細を公表する。北陸3県の(並行在来線を引き継いだ)三セクで連携したスタンプラリーや県境をまたぐ観光・イベント列車の共同運行を検討していく。えちぜん鉄道、福井鉄道とも、首都圏などからの観光客をターゲットにしたフリー切符販売やイベントの共同開催を行っていきたい」

連載一覧・地域鉄道の針路~県内3社トップに聞く

 新幹線時代を控え、観光客やビジネスマンの「足」として期待される福井県内の地域鉄道。一方、少子高齢化や道路交通の発達で地方の鉄路は全国的に苦境にある。ハピラインふくい、えちぜん鉄道、福井鉄道の県内3社はともに福井県庁OBが社長に就任した。トップに経営課題や展望を聞く。

【1】ハピラインふくい・小川俊昭社長/新駅設置、一日も早く

【2】えちぜん鉄道・前田洋一社長/恐竜列車、特需つかむ

【3】福井鉄道・吉川幸文社長/工芸産地、食巡り提案

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