長崎県にもドコデモこども食堂 「肩肘張らない」支援の形 企業などの善意生かし

「ドコデモこども食堂」の取り組みについて話す高比良さん(左)と松島さん=長崎市、レッケル

 子どもの支援に取り組む一般社団法人「明日へのチカラ」(大阪市)が全国各地の支援団体と連携して展開する「ドコデモこども食堂」。地域の提携店で食事ができるクーポンの利用対象は、虐待防止などの観点から支援団体が必要だと判断した家庭としている。所得や家族構成など明確な基準を設けていない。
 同法人の岩朝しのぶ代表理事は「(平等性が求められる)公的な制度と違い、支援したい人を支援できる。それが民間の強み」だとする。
 提携する店舗も支援団体が選定。▽家庭と長期的につながれるように店員の入れ替わりが比較的少ない▽子どもが一人でも飲食しやすい雰囲気-などを求めている。利用状況は同法人が管理し、支援団体とも共有。「貧困関係のデータは意外と少ない」(岩朝さん)といい、利用した曜日や時間帯、人数などの情報をビックデータとして蓄積する。
 岩朝さんは「割り引きなど特別な対応は求めておらず、店舗に負担はかけないやり方。利用者が来店すれば利益にもつながるため、地域経済を回していく側面もある」と説明。福祉とコロナ禍からの経済回復という両面支援ができ、ふるさと納税での支援の可否など、関心を示す自治体は全国で増えているという。

 長崎県では長崎市でスタートした。南山手町の「みなみやまてこども家庭支援センターびぃどろ」が窓口となり、現時点で2店舗が提携している。そのうちの一つ、松が枝町の飲食店「レッケル」の店長、松島伸一さん(56)は「肩肘張らずにやっていきたい。帰る時に子どもたちが笑顔になってくれればそれでいい」と話す。
 びぃどろの副センター長、高比良亮さん(46)によると、現在の利用対象は4世帯。このうち3世帯は先月、同店を訪れた。トルコライスを注文した子がいれば、ざるそばをおかわりした子も。松島さんはその様子をうれしそうに眺め、手が空いたときに会話を楽しんだという。
 高比良さんは、ドコデモこども食堂を「新しい福祉の形になり得る」と可能性を口にする。社会貢献として子ども支援を検討する企業や個人は少なくないが、「支援団体とうまくつながっていないケースは多い」と指摘。企業などの善意を生かすシステムを構築することは、子どもに優しい地域づくりにもつながると強調する。
 「まずは地道に実績を重ね、成功モデルを築いていく」と高比良さん。将来的には今回のシステムを活用しながら長崎独自で運営し、県内各地に支援の輪を広げられれば、と先を見据える。
 県内では他に、大村市で不登校やヤングケアラー支援などを行うNPO法人「schoot(スクート)」が運営する施設「まつなぎや」も事業への参加を申請し、準備を進めている。

 寄付などへの問い合わせは「びぃどろ」(電095.893.5231)まで。

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