僅差の予選を制したトヨタ小林可夢偉「守りの走りはできない」。決勝のカギは暑さか/WECモンツァ

 7月8日、イタリアのモンツァ・サーキットでWEC世界耐久選手権第5戦モンツァ6時間レースの予選が行われ、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)の7号車GR010ハイブリッドを駆る小林可夢偉が自身今季2度目となるポールポジションを獲得。ブレンドン・ハートレーがアタックした8号車は、3番手を獲得した。

 ミラノ近郊に位置するモンツァは、この日も夏の暑さとなった。気温が30度を超え、路面温度も限りなく50度に近づくなか、15時30分過ぎにハイパーカークラスの予選セッションはスタートした。2台のGR010ハイブリッドは、今大会で使用可能な2種類のコンパウンドのうちの柔らかい方となるミディアムを選択し、アタックへと向かった。

 最初のアタックではハートレーが1分35秒640を記録。可夢偉がこれを上回り、その時点でのトップとなる1分35秒549をマークする。

 次の周、可夢偉は第1シケインでわずかにタイムロスを喫するが、その後素晴らしいアタックを見せて挽回し、モンツァ・サーキットにおけるハイパーカーの新たなコースレコードとなる1分35秒358を叩き出した。直後にフェラーリAFコルセの50号車フェラーリ499Pが好タイムをマークするが、可夢偉には0.017秒及ばなかった。

 ハートレーも2度目のアタックでタイムを更新したが、フェラーリ50号車には0.085秒及ばず3番手。2台のGR010ハイブリッドはその後もアタックを続けたが、タイヤのグリップはピークを越えており、他の車両もタイム更新とはならず、7号車のポールポジションが決定した。

 TGRにとって今季3度目となるポールポジション獲得により、貴重な1ポイントを獲得。TGRはマニュファクチャラーズタイトル争いで2位のフェラーリとの差を19ポイントに拡げている。

 この予選では、ハイパーカークラスの上位7台がコンマ5秒以内に入る接戦となった。9日に予定されている決勝はさらに気温が高くなる予報で、多数のハイパーカーによるエキサイティングなレースが予想される。決勝レースは現地時間12時30分(日本時間19時30分)にスタートが切られる予定だ。

 TGRからモンツァの予選に挑んだふたりのドライバーのコメントは、以下のとおり。

■小林可夢偉(チーム代表兼7号車ドライバー)

「通常、6時間レースであれば、ポールポジションはあまり意味をなさないといつも言ってきました」

「しかし、ル・マンの後、各車のラップタイムが非常に接近してきており、そんな中でポールポジションを獲得できたことは素晴らしいですし、本当に嬉しいです。セッション序盤、コース上のトラフィックは理想的とは言えませんでしたが、なんとかクリアラップを確保してアタックしました」

「ここモンツァでは、すべてのハイパーカーが大接戦を繰り広げている中で、リスクを負わない守りの走りはできないので、思い切ってアタックしました。路面温度が午前中の練習走行の時とは少し異なったため難しかったですが、クルマには満足しています」

「決勝はさらに暑くなることが予想され、タイヤ戦略が重要になるでしょう。チームはタイヤ摩耗を理解しながら、最善の方法を見出すためにハードワークを続けてきました。この週末、我々のGR010ハイブリッドはとても良い仕上がりですし、特にイタリアのファンの皆様の前での決勝レースが楽しみです。激しい戦いになるはずです」

■ブレンドン・ハートレー(8号車)

「すべてのハイパーカーが非常にタイムの接近した予選だったので、それを考えれば3番手は満足いく結果だ」

「可夢偉の結果からわかるとおり、我々のGR010ハイブリッドにはポールを狙える力があった。素晴らしいアタックでポールを獲得した彼を祝福したい。また、彼がポールを獲得したことで、ライバルにポイントを与えず我々のタイトル争いにとっても意味があるものとなった」

「私のアタックラップでは、直前にいた車両に近付きすぎ、わずかにタイムをロスしてしまった。しかし、ポールタイムとのコンマ1秒差は無いようなもので、誰でもどこかでわずかなタイムロスはしているものだ」

「明日の決勝で我々の2台がトップ3からスタートできるというのは素晴らしいことで、チームの努力の賜物だ」

ブレンドン・ハートレーがアタックした8号車GR010ハイブリッド

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