社説:マンション評価額 公正公平な算定方法適用を

 国税庁が発表した2023年分の路線価(1月1日時点)によると、全国の標準宅地の平均変動率は、2年連続の上昇となった。新型コロナウイルス禍で停滞していた経済活動が再開されたことや、旺盛なマンション需要がけん引したようだ。

 路線価は全国の主要道路に面した土地の評価額であり、相続税や贈与税を算定する際の基準となる。公正、公平に運用されるのが望ましい。

 ところが、発表後の景気変動などで地価が急落し、納税者に著しい不利益が生じないよう、市場価格より低く設定されているため、節税策に使われることがある。

 タワーマンションを用いたいわゆる「タワマン節税」は、その極端な例である。

 防止に向けて国税庁は、その評価額を市場価格の最低6割に引き上げる新たな算定方法案をつくった。

 妥当なのか、実効性があるのか、問われることになろう。

 参考になる上告審判決が、昨年4月に出ている。

 首都圏のマンション2棟を、14億円近くで購入した男性の死後、その相続人が路線価で時価を3億円余りと算出し、銀行からの借り入れを差し引いて、相続税を0円と申告した。

 これに対して国税当局は、独自の鑑定で13億円近い評価額を算定するなどして、3億円余りを追徴課税した。

 上告審では、この処分の妥当性が争われ、最高裁は「適法」と判断した。

 いくら何でも、マンションを相続しておいて、相応の納税をしないのは、常識を著しく欠いている。

 ただ、国税当局が追徴課税する際に用いたのは、財産の評価方法に関する例外規定で、明確な基準によらず、恣意(しい)的な運用との懸念もあった。

 新たな算定方法案は、こうした運用を避けるために、検討されてきたといえる。

 相続税額は、路線価を基にした評価額などを使って算定されている。

 タワマンなどでは、敷地面積を戸数で分けるので、持ち分が小さくなり、評価額が低くなってしまう。人気があって高価な上層階ほど、市場価格と評価額の隔たりが大きくなりやすい。

 評価額が、市場価格の3割程度しかない例もあるという。

 そこで、マンションの築年数や階数、物件の所在階、持ち分の広さなども考慮して評価額を算定し、一戸建ての平均値と同等に市場価格の最低6割になるようにする。

 国税庁はパブリックコメント(意見公募)を経て、来年1月以降の適用を目指している。

 節税目的のマンション購入は物件の高騰を招くという人がいる一方、売れ行きへの影響を心配する声もある。しっかり点検し、納得できるものとしたい。

© 株式会社京都新聞社