フェラーリ、プジョーとの激しいバトル。レース折り返しは7号車トヨタが首位【WECモンツァ 決勝3時間後レポート】

 WEC世界耐久選手権第5戦モンツァの決勝はスタートから3時間が経過。レースの折り返しを迎えた時点ではTOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタGR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組)が総合首位に立っている。

 LMP2クラスではユナイテッド・オートスポーツの23号車オレカ07・ギブソン(ジョシュ・ピアソン/ギド・バン・デル・ガルデ/オリバー・ジャービス組)が首位を走行中。LMGTEアマはデンプシー・プロトン・レーシングの77号車ポルシェ911 RSR-19(クリスチャン・リード/ミケル・ペデルセン/ジュリアン・アンドラウアー組)がクラス首位だ。同クラスを戦う木村武史とケイ・コッツォリーノの57号車フェラーリ488 GTEエボ(ケッセル・レーシング)はトラブルによってクラス11番に後退。星野敏がスタートドライバーを務めた777号車アストンマーティン(Dステーション・レーシング)は序盤の接触によってクラッシュを喫し、残念ながらリタイアとなっている。

■8号車トヨタにふたつのペナルティ

 7月7日(金)から始まったレースウイークの最終日もイタリア北部、ミラノ郊外に位置するモンツァは晴天に恵まれた。気温32℃、路面温度51℃に達するなか、6時間の決勝レースは2周のフォーメーションラップ後に定刻12時30分にスタートが切られた。

 直後の1コーナーでは、2番手50号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)がポールシッターの7号車トヨタGR010ハイブリッド(TOYOTA GAZOO Racing)に対してブレーキングで並びかけて前に出たが、シケインを適正に通過することができず直後にポジションを譲っている。後方では予選3番手の8号車トヨタGR010ハイブリッドと、6番手51号車フェラーリ499Pが接触しル・マンウイナーの51号車がスピン。これによってクラス最後尾に下がってしまう。

 1コーナーでのアクシデントのあおりを受けハイパーカークラスでは約半数のクルマがシケインをカットする状況となった。オープニングラップを終えてのトップ8オーダーは、マイク・コンウェイ駆る7号車トヨタを先頭に50号車フェラーリ、93号車プジョー9X8(プジョー・トタルエナジーズ)、2号車キャデラックVシリーズ.R(キャデラック・レーシング)、94号車プジョー9X8、38号車ポルシェ963(ハーツ・チーム・JOTA)、5号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)、そして8号車トヨタというものに。

 全車がオレカ07・ギブソンの実質ワンメイクとなっているLMP2クラスでは、予選2番手の28号車オレカ(JOTA)が順位を上げてトップに浮上。一方、ロバート・クビサの快走で予選首位となった41号車オレカ(チームWRT)は、姉妹車の31号車とユナテイテッド・オートスポーツの22号車にも先行を許し4番手に後退している。

 スタートからまもなく、93号車プジョーが1コーナーのブレーキングでミゲル・モリーナ駆る50号車フェラーリをかわして2番手に浮上する。ミケル・イェンセンは首位を走る7号車トヨタにも迫っていく。一方、8号車には51号車フェラーリとの接触に関して“非がある”として、ピットストップ時にプラス10秒のペナルティが科せられた。

 トヨタの1台にペナルティが出た直後、アスカリ・シケインで777号車アストンマーティン・バンテージAMR(Dステーション・レーシング)がクラッシュを喫し、これによってセーフティカー(SC)が出動することに。星野敏がドライブしていた777号車はセバスチャン・ブエミ駆る8号車に幅寄せを受けるかたちで姿勢を乱した直後、スピン状態となりフロントからウォールにヒットしてしまった。

 SC先導中にピットエントリーオープンになると2号車キャデラック、ペンスキーの6号車とプロトン・コンペティションの99号車ポルシェ963、51号車フェラーリがピットへ。ユナイテッド・オートスポーツがワン・ツーを築いていたLMP2では、アルピーヌ36号車を除く全車がピットに飛び込んだ。36号車もコースグリーンになる前にピットストップを行っている。

 GTEアマクラスは約半数が入ったが、ポールポジションから首位を快走しているサラ・ボビーの85号車ポルシェ911 RSR-19(アイアン・デイムス)は入らず。一方、5番手から3番手に順位を上げてきたベン・キーティングの33号車シボレー・コルベットC8.R(コルベット・レーシング)はこのタイミングで1回目のピット作業を行っている。

 スタートから35分後に約20分間のSCランが解除され、直後にイェンセン駆る93号車プジョーが首位7号車のコンウェイをかわしてレースリーダーとなった。また、翌周には50号車フェラーリに乗り込んだモリーナもトヨタをかわしていく。

 ブエミがドライブする8号車には777号車アストンマーティンをクラッシュさせた件で1分間のストップ&ゴーペナルティが下る。このペナルティを消化した8号車はラップダウンとなっている。

スタート直後の1コーナー
8号車トヨタGR010ハイブリッドと接触した51号車フェラーリ499Pがターン1でスピン。8号車には10秒加算ペナルティが科された

■戦略が異なる2グループが入れ乱れる展開に

 スタートから1時間後、SC中に入らなかった93号車プジョーと50号車フェラーリが1回目のピット作業を同時に行い、翌周には7号車トヨタもピットに入った。ピットアウトは50号車がこのグループの先頭に。7号車はピットアウト時に一度クルマを下げる必要があり若干の後れを取った。

 先にピットに入っていた組ではアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ駆る38号車ポルシェ963がトップを走り、ワークスの6号車ポルシェ、フェラーリ51号車が続くオーダーに。約20分後に彼らが2度目のピットに入るとモリーナの50号車がトップに。しかし、2スティント終わりのピットタイミングでは接近戦を演じていた7号車トヨタにオーバーカットを許し、ホセ-マリア・ロペスが新たなレースリーダーとなっている。

 1時間目の最終盤、序盤に好走を見せていた94号車プジョーがスロー走行に。シフトにトラブルを抱えた同車は2時間目のはじめにガレージに入れられてしまった。この直後、グループのトップに立っていたミカエル・クリステンセン駆る5号車ポルシェを7号車トヨタのロペスがパス。モリーナからニクラス・ニールセンに替わった50号車フェラーリも続いた。

 スタートから2時間8分後、9号車オレカ(プレマ・レーシング)に当てられた10号車オレカ(ベクター・スポーツ)がレズモでクラッシュを喫し、2度目のSCが出動する。この直後、レースリーダーとなって38号車ポルシェが電気系トラブルによってストップ。すぐに再始動することができたが順位を落とし、その後のイレギュラーピットインで完全に戦線から離脱することとなった。

 リスタート後にはSC中にも短い給油を行っていた2号車キャデラック、6号車ポルシェ、51号車フェラーリが再度ピットに入り、1週間前の引き渡されたばかりの99号車ポルシェがレースリーダーとなった。このクルマが4時間目を迎える直前にルーティンのピット作業を行ったため、スタートから3時間を迎えるタイミングではふたたびロペス駆る7号車がトップに戻っている。

 この後ろには約16秒遅れて50号車フェラーリがつけ、姉妹車51号車フェラーリが3番手。ジャン-エリック・ベルニュ駆る93号車プジョーが4番手に続き、ペンスキーの5号車ポルシェ963がトップ5に入っている。

 LMP2クラスはユナイテッド・オートスポーツ勢が強さを見せており、23号車オレカが序盤からレースをリードし、この3時間経過時点でも首位をキープしている。姉妹車22号車も好走を見せていたが、3時間目の終わりにGTEカーと接触してスピン。表彰台圏内に居ながら大きく順位を下げてしまった。これに代わってオープニングラップで首位に立ったJOTAの28号車が3番手に浮上し、トップと9秒差の2番手にはチームWRTの31号車がつけている。

 LMGTEアマクラスもハイパーカーと同じくチームごとに戦略が分かれるなか、ポールシッターの85号車ポルシェ911 RSR-19が2時間目まで快走を見せたが、デンプシーの77号車ポルシェがこれを逆転しクラストップに。かわされた“女性組”85号車はクラス2番手。同3番手にキーティングの力走のあと、ピットレーンでのスピード違反によってドライブスルーペナルティを受けた33号車コルベットがつけている。

 日本勢は前述のとおり、777号車アストンマーティンがクラッシュによってリタイア。57号車はマシントラブルによって遅れを取りクラス11番手となっている。

50号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ) 2023年WEC第5戦モンツァ6時間レース

© 株式会社三栄