火災保険は賃貸でも自分で選べる 水漏れや家電の故障までカバーできる銘柄は

テレビの故障もカバー可能(写真:アフロ)

「火災保険は、火事だけを対象とした保険だと思っていませんか。実は、幅広いトラブルをカバーしてくれます。たとえば、自宅のトイレが詰まって汚水があふれたときには、あわてて水道修理会社を呼んでしまう人が多いと思います。でもそんなときは加入している火災保険の付帯サービスを利用すれば、24時間対応で、無料で提携業者を派遣してくれることも。さらに、賃貸マンションでも火災保険は自分で選べ、乗り換えることも可能。自分にピッタリの便利な火災保険を見つけましょう」

こう話すのは“保険のプロ”として活躍するFPの長尾義弘さん。長尾さんに、火災保険でカバーできる損害の例を教えてもらった。

「次に紹介するケースはその一例ですが、大手の火災保険の付帯サービスでは、カギ開けサービスなども24時間無料でついている保険が多い。このほか、『汚損・破損』の補償がついていると、不測かつ突発的な事故ならば、床や壁などの建物だけでなく、家財や家電などが破損したときにも修理費や新品への買換え費用がもらえます」(長尾さん・以下同)

■知らないと損するこんなトラブルでも補償される火災保険実例7

【1】洗濯機のホースが外れて、洗面所が水浸しに。キャビネットや除湿機がダメになった

<補償の内容>
キャビネット+除湿機15万円の場合、損害保険金10万円+臨時費用保険金1.5万円=合計11.5万円が受け取れる

<適用されるために必要な加入時の補償内容>
保険の対象:家財/補償内容:漏水などの水漏れ+臨時費用補償特約

【2】ロボット掃除機が階段から落ちて、階段に大きな傷をつけた

<補償の内容>
階段修理費10万円の場合、損害保険金5万円+臨時費用保険金1万円=合計6万円が受け取れる

<適用されるために必要な加入時の補償内容>
保険の対象:建物/補償内容:不測かつ突発的な事故汚損・破損など+臨時費用補償特約

自宅の2階でロボット掃除機を使用中、不測の事態で階段から落下して、階段に傷がついてしまったケース。階段の修理は大掛かりなのでそのままにしてしまいがちではないだろうか。

「この場合、仮に階段の修理代10万円を保険会社に請求すれば、修理代の一部として5万円程度、契約時に臨時費用補償特約に加入していればプラス1万円を受け取れるはずです」

【3】子どもがテレビにリモコンを投げつけて、テレビの画面が壊れた

<補償の内容>
テレビ液晶画面交換15万円の場合、損害保険金10万円+臨時費用保険金1万円=合計11万円が受け取れる

<適用されるために必要な加入時の補償内容>
保険の対象:家財/補償内容:不測かつ突発的な事故(汚損・破壊など+臨時費用補償特約)

「故意でないかぎり、液晶画面の交換費用から免責と定めた一定額を引いた差額と臨時費用保険金(特約加入が条件)を受け取ることができるはずです」

【4】自宅マンションからオートロックで閉め出されてしまった

<補償の内容>
24時間対応、無料

<適用されるために必要な加入時の補償内容>
付帯サービス:暮らしのトラブルサポートサービス(各社で名称は異なる)

【5】トイレが詰まって、水があふれだした

<補償の内容>
24時間対応、無料

<適用されるために必要な加入時の補償内容>
付帯サービス:暮らしのトラブルサポートサービス(各社で名称は異なる)

【6】買ったばかりの15万円の高級カメラを手が滑って落としてしまい修理が難しいというので買い換えた

<補償の内容>
カメラ買換え費用15万円のうち、特約保険金14万円が受け取れる

<適用されるために必要な加入時の補償内容>
補償内容:携帯品損害特約

【7】近くに雷が落ちてパソコンが壊れたので、パソコンを買い換えた

<補償の内容>
パソコン交換費用15万円のうち、損害保険金10万円+臨時費用保険金1万円=合計11万円が受け取れる

<適用されるために必要な加入時の補償内容>
保険の対象:家財/補償内容:落雷+臨時費用補償特約

このほか自転車事故で相手をケガさせた場合など、実際に火災保険で補償される範囲は想像以上に広いのだ。

「知らなかったという人は、次の4つの項目をチェックし、自分の火災保険の確認から始めましょう」

■来年には値上げが予定されている

【フルサポートの保険か?】

「火災保険は大きく分けて『建物』と『家財』の2つがあります。保険料を安くしたいからと『建物』だけに加入した場合、家具や家電製品などは補償対象外。賃貸に住んでいる人は入居契約時に『建物』の火災保険にだけ加入している場合が多いので、追加で『家財』にも加入するとよいでしょう」

【補償範囲の「汚損・破損」に加入しているか?】

「火災保険では補償範囲をどこまでにするかを選ぶことができます。『汚損・破損』の補償も含めたフルサポートの契約にしておくことで、紹介したほとんどの補償を受けることが可能になります。なお家電製品の経年劣化による故障などは補償の対象外になりますので注意してください」

【どの特約をつけているか?】

「火災保険の特約は『臨時費用補償特約』『個人賠償責任特約』など、保険会社によって異なります。なかでも個人賠償責任特約は日常生活の事故によって、他人にケガをさせたり、他人のモノに損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合に備えるもの。最近、事故が多く報告されている自転車事故による相手への補償のリスクを考えると加入をおすすめします」

【申請しないと受け取れない】

「水漏れやカギ開けなど緊急を要する場合はもちろんですが、補償を受けるにはまず保険会社に連絡をすることが必要になります。いざというとき、すぐに連絡ができるように保険会社の連絡先は必ずスマホに入れておくことです」

もし「汚損・破損」や必要な「特約」に加入していない、また新たに「家財」に契約したい人などは火災保険の見直しが必要になる。

「フルサポートの保険に加入し直す場合、保険会社によって保険料が異なるので、同じ条件の“相見積もり”が大切です。次の数社に見積もりし、いちばん安い保険商品を選んでください」

【長尾さんおすすめの主な火災保険】

<大手損害保険会社の火災保険>

・損保ジャパン「THE すまいの保険」
・東京海上日動「トータルアシスト住まいの保険」
・三井住友海上「GK すまいの保険」

<インターネット系の火災保険>

・ソニー損保「新ネット火災保険」
・楽天損保「ホームアシスト」
・セコム損保「セコム安心マイホーム保険」

火災保険料は、家の広さや築年数など、さまざまな条件を加味して算出されるため、見積もりをしてみよう。’24年に平均13%と大幅な保険料の値上がりが予定されている。見直すなら今年中がチャンスだ。

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