2023年上半期(1-6月) 「ゼロ・ゼロ融資」利用後の倒産322件 11カ月連続で40件超、 2020年以降累計は907件

~ 2023年上半期(1-6月)「ゼロ・ゼロ融資後」倒産 ~

「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」を利用した企業の倒産は、 2023年上半期(1-6月)は322件(前年同期比85.0%増、判明分)で、前年同期(174件)の1.8倍増と急増した。 2020年7月に初めて倒産が発生し、2022年8月から11カ月連続で40件を上回り、累計は907件に達した。
ゼロ・ゼロ融資は、コロナ禍で傷んだ中小・零細企業の資金繰り支援策として実施され、倒産抑制に劇的な効果をみせた。だが、売上が戻らず、支援策の副反応として過剰債務に陥った企業は多く、返済開始とともに倒産に追い込まれる企業が増えている。

産業別では、最多はサービス業他の111件(前年同期比122.0%増)で、前年同期の2.2倍増と大幅に増えた。特に、対面型サービス業で目立ち、飲食業は支援策の終了と同時に、仕入価格や光熱費の高騰、人手不足に見舞われ「息切れ」倒産が増えた。
負債額別では、最多は負債1億円以上5億円未満が132件(同109.5%増)で、中堅クラスにも倒産が広がっている。
コロナ禍の出口を見据え、経済活動は本格再開している。だが、2022年のロシアのウクライナ侵攻、円安などで原材料価格の上昇や物価高が広がり、人件費を含めてあらゆるコストアップが企業にのしかかっている。こうしたなか、ゼロ・ゼロ融資を利用した企業の返済が夏場にピークを迎える。すでに、業績改善が遅れながら返済が始まった企業は、収益悪化から倒産が出始めている。政府は今年1月、ゼロ・ゼロ融資の借換保証制度「コロナ借換保証」を創設し、5月末の保証承諾件数は約4万件を数える。だが、借換保証の利用には金融機関の継続的な伴走支援や経営行動計画書の四半期ごとの進捗確認などが必要で、どこまでカバーできるか注目される。

※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。


2023年上半期の「ゼロ・ゼロ融資」利用後倒産は322件

2023年上半期(1-6月)の「ゼロ・ゼロ融資」を利用した企業の倒産は322件(前年同期比85.0%増)で、大幅に増えた。2022年下半期(7-12月、279件)と比べ43件(15.4%増)増加し、上下半期を含めた半期ごとの件数では最多を記録した。
月次では2022年8月から40件を上回っている。2023年3月には月次最多の63件が発生、6月も3月に次いで2番目の61件が発生し、次第に増加ピッチが強まっている。

【産業別】サービス業他が2.2倍増で最多

産業別は、最多がサービス業他の111件(前年同期比122.0%増)で2.2倍増、全体の3割超(構成比34.4%)を占めた。コロナ禍の直撃を受けた飲食業や美容業、娯楽業などを含む。
次いで、建設業が65件(同96.9%増)でほぼ倍増したほか、製造業が45件(同40.6%増)、卸売業が42件(同68.0%増)、小売業が26件(同85.7%増)で続く。
10産業のうち、金融・保険業(前年同期ゼロ)を除く9産業で発生、9産業すべてで前年同期より増加した。

【業種別】飲食店が最多

業種分類別(中分類)では、「飲食店」が42件で最も多い。上位10位までに「飲食料品卸売業」が14件、「持ち帰り・配達飲食サービス業」と「食料品製造業」が各10件で入り、飲食関連業種が目立った。仕入価格や光熱費の高騰、人手不足による営業難が経営を圧迫した。
2位は「総合工事業」31件で、3位の「職別工事業」24件、5位の「設備工事業」10件と合わせ、建設関連業種も上位に揃った。資材価格の高騰や調達遅れが、資金繰りの行き詰まりに繋がった。

【形態別】消滅型倒産が約9割

形態別では、消滅型の破産が287件(前年同期比79.3%増)で、全体の約9割(構成比89.1%)を占めた。特別清算4件と合わせた消滅型倒産は291件にのぼった。
一方、再建型の倒産は民事再生法が8件(前年同期3件)と増加したものの、会社更生法はゼロ(同ゼロ)だった。
このほか、取引停止処分が20件(同7件)、内整理が3件(同1件)発生した。

【従業員数別】10人未満が7割超

従業員数別は、最多が5人未満161件(前年同期比133.3%増)で前年同期の2.3倍増、半数(構成比50.0%)を占めた。5人以上10人未満が77件(同23.9%)で続き、10人未満の小規模倒産が238件で7割超(同73.9%)を占めた。
このほか、10人以上20人未満が50件(前年同期比47.0%増)、20人以上50人未満が28件(同27.2%増)、50人以上300人未満が6件(前年同期同数)、300人以上がゼロ(同ゼロ)。規模が大きくなるにつれて、増加率は縮小した。

【地区別】9地区中、8地区で増加

地区別では、最多が関東の134件(前年同期比179.1%増)で約2.8倍に増加し、4割(構成比41.6%)を占めた。次いで、九州45件(同13.9%)、近畿37件(同11.4%)、東北35件(同10.8%)、中部28件、北海道16件、中国13件、四国10件、北陸4件の順で続く。北陸を除いた8地区で前年同期を上回った。
都道府県別では、東京都が73件で最多、2位の埼玉県24件の3倍にあたる。以下、福岡県22件、大阪府21件、北海道16件が続く。

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