「菌たろう」腸活で大活躍 絵本読み聞かせを滋賀で続ける女性の思い

自ら企画した絵本「菌たろう」を手にする三科さん。発酵食品の大切さを伝える(高島市マキノ町・道の駅マキノ追坂峠)

 「はっけ よいよい はっけ よーい」。抑揚の効いた優しい口調で、自ら企画した絵本「菌たろう」を読み上げる三科美保子さん。54歳。これまで滋賀県高島市内の小学校や保育園、認定こども園、道の駅などで読み聞かせに取り組んできた。

 人間の体には約千種類100兆個の腸内細菌があるとされ、主に善玉菌と悪玉菌、日和見菌に分類される。「腸内細菌がバランス良く存在することで人を守ってくれる。そのためには滋賀で根付く発酵食品が大切」と子どもにも分かりやすく伝えている。

 主人公の善玉菌「菌たろう」と悪玉菌「あっくん」、日和見菌「ひよりちゃん」が男児のおなかの中で相撲の稽古に励み、病原菌に立ち向かうというストーリー。男児が肉や菓子ばかり食べると、菌たろうは弱々しくなって負けてしまう。菌たろうは「はっこう よいよい はっこう よーい」と声を絞り出す。男児がふなずしや納豆、ヨーグルトなど発酵食品を食べると、菌たろうは元気になって菌をやっつける。

 旧志賀町出身。「薬代わりにふなずしを食べていた」と幼い頃から発酵食品は身近だった。38歳の時、セラピストとして大阪で独立。2011年から高島に拠点を移してカフェも展開し、自身の食事療法に基づいたメニューを提供していた。

 13年には同市で「全国発酵食品サミット」が開かれた。お米のヨーグルトの製造販売を手掛ける高島出身の経営者と知り合い、発酵食品の大切さを学び伝えた。19年には同市安曇川町で企業組合「ビュースパイア」を立ち上げ、米と乳酸菌を原料とするオリジナルのヨーグルトの販売を本格的に始めた。

 そんな折に新型コロナウイルス禍。主に百貨店で対面販売を行っていたため苦境に。「違う方法で発酵について伝えたい」と絵本作りと読み聞かせを構想し、発酵産業を育成する県の補助金を受けた。「菌たろう」を自身で企画し、絵本作家のホッシーナッキーさんに制作を依頼し、昨春、完成させた。

 「子どもが熱心に聞いてくれることがうれしい。発酵食品の文化をつなげてほしい」と笑顔で話す。コロナ禍から経済活動も回復してきた。ヨーグルトの販売と国際資格を持つセラピストの本業にもますます力が入る。高島市安曇川町在住。

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