『ニッサン・フェアレディZ(2004年/Z33型/GT500クラス)』“R”の栄光を継いだ新たな“Z”【忘れがたき銘車たち】

 モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは2004年に全日本GT選手権のGT500クラスを戦った『ニッサン・フェアレディZ』です。

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 2022年からニッサンGT-Rに代わってスーパーGTのGT500クラスへと投入され、見事、デビューイヤーにタイトルを獲得したニッサン・フェアレディZ。そんな『Z』は、今から20年程前の2004年にもGT-RからGT500クラスの主力車の座を引き継いで、デビューイヤーチャンプに輝いた実績を持っている。その2004年にGT500クラスに登場した『Z』が、今回紹介するZ33型の『ニッサン・フェアレディZ』だ。

 2004年のデビューに向けて、GT500仕様のZ33型がシェイクダウンを行ったのは2003年10月のこと。その年の最終戦を迎える前という3メーカーのなかで一番早いタイミングだった。

 BNR34型『スカイラインGT-R』からベース車をチェンジしたのにも関わらず、これほど早くシェイクダウンを迎えられたのは、すでに『GT-R』で実績のあったV型6気筒ツインターボエンジンのVQ30DETTをはじめとする多数のパーツを移植したことで、開発時間の短縮を図れたことにあった。これによって車体剛性や低重心化、空力性能という重要なポイントに念頭を置いて開発を進めることができた。

 開発の結果、『Z』は『GT-R』よりもエンジン搭載位置を低く、後退させることができ、低重心化に成功。加えて「タイプE」という前後オーバーハングを大幅に延長した特別仕様車をホモロゲーション用に作った。これによって前後のアンダーフロア長を稼いで、ボディ下面でのダウンフォース確保も果たすなど、『Z』の元来持つボディ形状のいいところも活かしつつ、空力性能も向上させた。

 このような“秘策”も含めて2003年までのGT-Rよりも大幅にポテンシャルアップを果たし、『Z』は2004年の開幕戦を迎えた。2004年シーズンにはザナヴィニスモ Z、G’ZOX・SSR・ハセミZ、カルソニック IMPUL Z、モチュールピットワーク Zという4台の『Z』が投入された。

 初陣であるTIサーキット英田が舞台の開幕戦でザナヴィがデビューウインを果たすと、第4戦の十勝スピードウェイラウンドではモチュール、オートポリスでの第6戦ではザナヴィがシーズン2勝目を記録した。続く鈴鹿サーキットで開催された最終戦をカルソニックが制し、この年『Z』は7戦中4勝をマークする活躍を見せた。最終的にシーズン2勝に加えて2度のポディウムフィニッシュを果たしたザナヴィが『Z』のデビューイヤー、そして全日本GT選手権最終年をタイトル獲得で飾ったのだった。

 しかしZ33型がGT500で王座に輝いたのはこの一度のみに終わる。次にニッサンがGT500においてチャンピオンを奪取するのは、2008年。GT-Rの復活まで待たなければならない。

2004年の全日本GT選手権第4戦十勝を制したモチュールピットワーク Z。影山正美とミハエル・クルムがステアリングを握った。
2004年の全日本GT選手権第1戦TIを戦ったG’ZOX・SSR・ハセミ Z。金石年弘とエリック・コマスがドライブした。
2004年の全日本GT選手権最終戦鈴鹿を制したカルソニック IMPUL Z。ブノワ・トレルイエと井出有治がステアリングを握った。

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