消費者からそっぽを向かれた良品計画がストップ高の復活劇−−どんな決算だったのか?

2023年の上期は、総じて株価は堅調でした。といっても、まるごと全部が上昇したわけではなく、置いてきぼりにされた冴えない銘柄もあります。その代表といってもいいのが、2023年1月19日の連載「良品計画とアダストリア…明暗分けたアパレル決算、勝ち・負けの境目はどこにあるのか?」で取り上げた良品計画(7453)です。


日本株上昇の波に乗れなかった良品計画

良品計画が2023年1月6日(金)に発表した第1四半期決算では、営業利益が前年同期比−54.9%と散々な数字。急激な円安と、原材料高に伴う仕入れコストの上昇のダブルパンチで撃沈しておりました。またこの時期は、徐々に外出の機会が増加し始めたことで、それまでのシンプル志向から、デザイン性のある華やかな洋服が求められる傾向にあったことも、ザ・シンプル代表ブランド「無印良品」にとっては逆風でした。決算発表翌日の株価は9.8%下落と、投資家からもそっぽを向かれ、堂々の負け組入りとなったわけです。

その後、4月13日(木)には通期営業利益予想を、①34,000(百万円)から②30,000(百万円)へと③11.8%と大きめの下方修正をしています。理由は、引き続き急激な円安と原材料高が挙げられています。

画像:良品計画「通期業績予想の修正に関するお知らせ」より引用

同時に発表された第2四半期決算は、①営業収益283,330百万円、②前年比+15.9%と二桁増収でありながらも、③営業利益10,177(百万円)、④前年比−46%とかなり大きな減益着地です。売上高営業利益率は3.6%と引き続き低迷しており、売上が伸びても利益がのびない非効率な営業が続いています。

画像:良品計画「2023年8月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」より引用

そもそも期待されていなかったこともあり、下方修正の減益着地であっても、翌日の株価はほとんど反応せず、+0.1%でした。その後も株価は低迷したまま、ぐいぐい上昇する日経平均株価とは乖離が拡がるばかり。

日本株上昇の波に、良品計画がいまいち乗れなかった理由のひとつに、ブランド力の低下があるように思います。無印といえばシンプルで、ストーリーのあるおしゃれ雑貨を、そこそこの価格で提供するのが強みですが、最近はDAISOの新業態「Standard Products」に追い上げられている印象です。

営業利益の5割超を稼ぐ中国の経済回復が、期待したほど芳しくないのも投資家から敬遠されている理由のひとつです。

期待されないなかで迎えた第3四半期決算

ところが、第3四半期決算が発表された翌営業日、株価はなんとストップ高! 全市場値上がり率ランキング堂々3位となりました。

いったいどんな決算内容だったのか、確認しましょう。

画像:良品計画「2023年8月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」より引用

①営業収益435,797百万円、②前年比+17.5%、③営業利益22,672(百万円)、④前年比−8.7%と、引き続き減益着地ではありますが、減益率は第2四半期の−46%から大きく縮小しています。直近3ヵ月(3-5月)の営業利益は12,495(百万円)で、前3ヵ月(11-2月)の5,156(百万円)に対して142.3%と急激に伸びています。

決算説明資料に目を通すと、国内事業、海外事業ともに好調だったとあります。とくにここまで不調の悪玉だった国内事業で、価格転嫁による粗利率の改善が見られること、さらに心配されていた中国大陸での業績が大幅回復していることが利益に寄与したようです。この結果をうけての翌営業日ストップ高。

ちなみに、同じ回でアパレルの勝ち組代表として取り上げたアダストリア(2685)は、その後も引き続き堅調で、直近6月30日(金)に発表された2024年2月期第1四半期決算は、①売上高68,478百万円、②前年比+18.1%、③営業利益6,278(百万円)、④前年比+37.2%と文句なしの好決算。四半期単位では、過去最高売上、最高営業利益になります。

画像:アダストリア「2024年2月期 第1四半期決算短信」より引用

しかし株価の反応はいまいちで、翌営業日こそ2.1%プラスでしたが、その後は3日間連続下落と冴えんません。

この両社の反応の違いは、非常におもしろいサンプルになります。

画像:TradingViewより

まったく期待されていなかったところで急激な改善を見せた無印良品はストップ高で、過去最高益を出しても「それがなにか?」的に無反応なアダストリア。単純にこれまでの業績の推移をみると、まちがいなくアダストリアはアパレル界の勝ち組ですが、今回の決算だけをみると、株式市場においては勝ち組とは言えません。

もちろん、これは短期的な株価の反応であり、長期的に見れば、株価は業績とほぼきれいに連動します。アダストリアの業績が引き続き堅調であれば、株価は持ち直し、逆に良品計画がふたたび減益幅を広げれば、株価は下落に転じることでしょう。

今後、2社がどういった展開を見せるか楽しみです。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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