難病の女性「さをり織り」で自己表現 大分市の薄田さん「喜ばれうれしい」【大分県】

木製の織り機で作品作りをする薄田ミキさん=大分市森
薄田さんが制作した美しい色合いの作品
展示即売会に出品した薄田さんの作品=大分市内

 【大分】大分市森の薄田(すすきだ)ミキさん(65)は現代手織り「さをり織り」の創作活動に励んでいる。子どもの頃、難病の脊髄小脳変性症を発症し、25歳から車椅子を利用する。ルールや型のない、さをり織りで自己表現。6月には市内で開催された展示即売会(県洋裁技能集団など主催)に初めて出品し、好評を得た。

 市内の就労継続支援B型事業所に通っていた6年前、職員から「さをり織りをやってみますか」と勧められた。脊髄小脳変性症は手の震えなどの症状がある神経の病気で、「何もできない」と思い込んでいた。しかし、重度の障害者も織る姿を見て、「もしかしたら、できるかもしれない」と希望を感じた。

 木製の織り機で一段を織ると、「次もやってみましょう」と職員。薄田さんはうれしくなり、織り続けたという。自宅でも制作するため、すぐに織り機を購入。夫の一(はじめ)さん(65)=訪問介護事業所管理者=や息子に縦糸を張ってもらい、1日当たり3、4時間ほど無心に横糸を織っている。

 ペースは1カ月に1枚から1枚半。アクリルやポリエステル、毛など素材や色が異なる約300種類の糸を買いそろえ、美しい色合いに仕上げている。「糸をじっと見ていたら、『私を使って』と言っているように感じる」と鋭い感性を生かす。

 展示即売会には長さ約1~3メートルの10点を出品し、3点が売れた。「買っていただき、驚いた」と笑顔を見せる。会場に置いたノートには来場者から「楽しくてワクワクする。色使いがすてき」「わが家で大切にします」などのメッセージが寄せられた。

 大分脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会長を務める薄田さんは「喜んでもらえることが一番うれしい。次も作ろうと思う。今後はティッシュペーパー入れなどの小物を作りたいし、教室も開きたい」と意欲を見せた。

 問い合わせは薄田一さん(080.3968.3125)。

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