CASTとソラリス、管内配管減肉検査ロボットを開発。人工筋肉を用いたミミズ型ロボットにフレキシブル超音波センサーを搭載

共同開発のコンセプトロボットを、2023年7月26~28日に東京ビッグサイトで開催される第49回プラントメンテナンスショー(メンテナンス・レジリエンスTOKYO2023内)で公開する。

社会的背景

高度成長期に建造された上下水道やガス導管といったインフラ配管や工場やプラント、ビル・マンション・学校などの配管の老朽化が進んでおり、配管の経年劣化による減肉や破断により爆発事故や漏水事故が至るところで多発しているという。それに対して、少子高齢化によって配管の保全人員は高齢化し、労働力不足が生じている。

上記のように配管を取り巻く環境には多くの課題がある中で、配管の維持・メンテナンスを自動化・省力化することは、今後の都市の持続可能性を考える上で重要な取り組みだ。

人や既存の配管検査ロボットが入り込めない小径配管の検査は、従来の技術では工業用内視鏡(ファイバースコープ)による映像を通した目視でしか配管内部を確認する手段はなかった。しかし、工業用内視鏡においても配管に3カ所以上の曲がり(エルボ)が存在すると、その先の深部への侵入が困難であり、配管内部の状況を非破壊で確認できなかった。

今回の共同開発によるアプローチは、その課題解決を、モーターと電子部品、および複雑な制御を用いた高価なハードロボットではなく、人工筋肉と空気圧制御で移動する、シンプルで安価なソフトロボットとそのロボットに搭載した超音波による減肉センサーで解決しようとしている。

ソラリスとCASTの共同開発について

ソラリスとCASTは、製造現場の配管メンテナンスという課題ターゲットが共通している。加えて、大学の独自技術を元に創業した「大学発ベンチャー」(ソラリス:中央大学、CAST:熊本大学)、リアルテックファンドを株主に迎えるといった共通点もある。これらの共通点をきっかけとして、2社は配管内の自律的な移動と、フレキシブルで薄型なセンサーによる超音波減肉モニタリングを掛け合わせた配管メンテナンスの新たなアプローチを目指すことになった。今回の共同開発品はUltra Soohaと名付けたコンセプトモデルで、今後実用性を高めるための開発を進めていくとしている。

ソラリス「Sooha」の特徴

ソラリスのミミズ型管内走行ロボットSoohaは、ミミズのぜん動運動を模倣し、人間や他のロボット機構では侵入が困難な細管内の走行および映像による可視化を実現。この技術により、従来技術では困難だった小口径配管内(内径100mm以下)の自律走行や90°の曲がりが多い配管内や垂直方向の走行が可能であり、これまで確認できなかった配管内の状態を把握することが可能となる。

また、本体が空洞である特徴を活かして、カメラ以外にも様々な検査装置や清掃機器をビルトインすることが可能であり、多くの企業様とのオープンイノベーションを創出可能なプラットフォームになり得るロボットだとしている。

CASTセンサーの特徴

「ゾルゲル複合体圧電デバイス」技術を活用した耐熱性とフレキシブル性により100℃を超える環境でも壊れずに動作するセンサー。高温・曲面への密着が可能な特徴に加え、約1mmの薄さも兼ね備えていることから、製造現場の高温箇所や人の手のアクセスが難しい狭所、点検の都度足場の設置・撤去の費用や手間を要する高所の配管やタンクに対して、効率的な減肉モニタリングを実現する。

Ultra Soohaでできること

Ultra Soohaは、ソラリスのSoohaとCASTのセンサーを掛け合わせたコンセプトモデル。人工筋肉と空気制御による自律的な移動を行いながら、人工筋肉の伸び縮みによる配管内部への密着のタイミングを利用して超音波による管厚の測定を行う。

これまで超音波による測定可能な範囲はセンサーを取り付けた箇所に限定されていたが、移動しながらかつ水などを用いない管内からの管厚測定に加え、Soohaに搭載されたカメラによる映像確認を同時に行うことも可能になった。コンセプトモデルとしては直管内の移動に限定した開発を行ったが、今後Soohaで対応可能なエルボも含めた管内移動管厚測定を実現するべく、開発を進めていくとしている。

展示会情報

[プラントメンテナンスショー(メンテナンス・レジリエンスTOKYO2023内)]

▶︎株式会社CAST

▶︎株式会社ソラリス

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