「夜、雨、時間制限…工事の難易度高く」国道1号バイパス橋げた落下事故から1週間「記憶にない規模」

国道1号バイパスの工事現場で8人が死傷した橋げた落下事故から7月13日で1週間です。原因の究明が進められる中、徐々に当時の状況が明らかになってきました。安全管理が徹底されるべき公共工事の現場で、なぜこの悲惨な事故は起きてしまったのでしょうか。

<坂口将也記者>

「事故から1週間が経ちましたが、落下した橋げたはそのままの状態となっています。現場の検証は続いていて、今は測量のような作業が行われています」

7月6日、静岡市清水区尾羽の国道1号バイパスの工事現場で橋げたが落下し、工事にあたっていた2人の作業員が死亡、6人の作業員らが重軽傷を負った事故。SBSは、救助活動にあたった消防隊に話を聞くことができ、事故当時の状況が少しずつ見えてきました。

<静岡市港北消防署 青木伸浩副署長>

Q通報時の内容は?

「通報時の無線状況は『橋脚が崩れ1名が挟まれている。そのほかは詳細不明』という無線内容だった」

Q指揮隊が現場に着いた時の様子は?

「消防隊が最先着した時は、3名が路上に倒れていたと報告を受けている」

落下したのが長さ65メートル、重さ約140トンという巨大な橋げたであることも、救助活動に大きな影響を与えました。

<静岡市港北消防署 青木伸浩副署長>

「まず現場が広範囲、東西と上下ということで、現状把握にすごく苦慮している。上からの落下物という危険性も考慮しながら活動しているので、安全面を考慮しながら活動したことが現場の状況を把握するのに苦労したと思う」

消防からは延べ21隊67人が出動していて、担当者は「この規模は記憶にない」と話します。

原因の究明が急務となる国土交通省は、大学教授ら3人の専門家で構成する事故調査委員会を設置し7月11日、初会合を開きました。

<事故調査委員会 舘石和雄委員長>

「次回(2回目)以降、できるだけ速やかにポイントをしぼって、事故の経緯と解明、再発防止策の確立に向けて議論を進めていきたい」

捜査関係者によりますと、今回の事故は橋げたを橋脚に降ろす作業中に起き、油圧ジャッキでサンドルといわれる積み木を撤去しながら橋げたを降ろす際に、何らかの原因でバランスを崩すなどのトラブルが発生したとみられています。

別の区間で工事に携わったことのある建設会社は、今回の工事は難易度が高いものだったと話します。

<別区間で工事を行った建設会社>

「(難易度が高い理由として)まず1つは夜、それと雨、それから一般道路を開放するにあたって時間制限がある、そういったいろいろな要因があると思う」

さらに被害を最小限に抑えるために、命綱を着ける場所も重要といいます。

<別区間で工事を行った建設会社>

「今回はたまたま落ちた橋げたに命綱をつけていた。でも結果的にはそれで事故があったということは命綱は役に立っていなかったと思う」

死傷した8人のうち橋脚の上で作業していた7人が命綱を装着していた今回の事故。警察は安全管理がなされていたかなど、業務上過失致死傷の疑いも視野に捜査を進めています。

事故の影響で現在、現場周辺の国道1号で終日、片側1車線の通行規制が行われています。これを受け国土交通省静岡国道事務所は、現場の南側にあり清水港付近を走る国道150号、通称「しみずマリンロード」や東名高速道路などの周辺道路へのう回を呼びかけています。

警察によりますと、現場検証は1か月以上続く見込みだということです。また、落下した橋げたの撤去作業については現場検証後を予定していて、規制解除にはまだまだ時間がかかりそうです。

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