かほっくり畑流される 石川県内大雨、収穫打撃

畝が削り取られたサツマイモ畑=13日午後3時15分、かほく市大崎

  ●かほく、「言葉にならない」

 12日夜に降り続いた猛烈な雨は、農作物の生産に甚大な被害をもたらした。13日、かほく市特産のサツマイモ「かほっくり」を栽培するかほく市大崎の砂丘地では、大量の雨水によって畝の一部が高さ2メートルにわたって削られ、数㌧分の収穫が絶望的な状況に。無残に崩れ落ちた畑を前に、生産農家は「言葉にならない」と立ち尽くした。

  ●畝の再生困難

 被害が確認されたのは、大崎園芸生産組合の喜綿(きわた)和彦組合長の畑。かほっくりは秋の出荷に向けて苗が順調に成長していたが、雨で畝が崩れ、苗の根の部分が土からはみ出した。

 畝を再生するには陥没した部分を土で埋めるしかないが、現在は「大崎すいか」の出荷作業で忙しく、手が回らないという。計100~150株に被害が出ており、喜綿さんは「数㌧を失う覚悟でいる」と無念さをにじませた。

 かほっくりは、昨年74歳で亡くなった喜綿さんの父雅之さんが「五郎島金時には負けん」を口癖に長くブランド化に汗を流してきた。現在、農家2軒が3.3ヘクタールの畑で栽培、計50㌧を出荷しており、このうち8割を喜綿さんが担っている。

 父の遺志を継いでサツマイモを丹精してきただけに、喜綿さんのショックは大きい。「自然災害やし、打つ手がないわ」。やり場のない怒りをこらえるように語った。

  ●スイカも水没

 隣の畑では、スイカも水に漬かる被害を受けた。喜綿さんによると、スイカは長く雨に打たれるほど病気になる確率が上がる。このため、今回の大雨で出荷を早めざるを得なくなったという。

 「本当は余裕を持って計画的に収穫を進める予定だったが、そうもいかなくなった」。13日も午前8時から出荷作業を行い、普段より50玉ほど多い約500玉をトラックに積み込んだ。

 喜綿さんは「これから先もまとまった雨が降るかもしれない。早め早めに出荷するしかない」と話した。

 ★かほっくり かほく市特産のサツマイモ。「かほく」と「ほっくりした食感」から命名され、2006年に商標登録された。スイーツなど関連メニューも多数考案されており、市がブランド化を推進している。

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