線状降水帯による豪雨で浸水被害…火災保険でどこまで補償される?

近年、天気予報で頻繁に聴くようになった「線状降水帯」。10年程前にはあまり聞かれなかった言葉です。2023年も線状降水帯による長く続く大雨で甚大な被害が起きています。万一の災害の備えとして加入している火災保険。水害に備えるための注意点を詳しく説明します。


線状降水帯とは

気象庁の「雨に関する用語」によると、線状降水帯とは「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域」をいいます。

線状降水帯という用語自体は昔からあったようですが、一般的に気象予報などで使われるようになったのは、平成26年8月広島の土砂災害と、平成27年9月関東・東北豪雨あたりからといわれています。線状降水帯は、局所的に急に発生し、同じ地域を通過または停滞し大雨を降らすので、台風などに比べ予測が難しく、対策の遅れを招き、結果大きな被害をもたらしています。

台風・ゲリラ豪雨・線状降水帯による豪雨被害は、夏から秋にかけての季節、日本全国どの地域でもリスクはあると言っていいでしょう。

水害にはどんな種類がある?

「水害」とひとくくりにいいますが、水害にはいろいろな種類があります。

1.外水氾濫による浸水被害
雨雲の停滞などによる局地的な大雨で、洪水・河川の氾濫が起き、床下・床上浸水が起きることを外水氾濫といいます。

2.内水氾濫による浸水被害
都市部によく見られますが、ゲリラ豪雨などで一気に降る雨を排水しきれず水があふれてしまうことを内水氾濫といいます。内水氾濫の形は2つあります。

ひとつは、川の増水で排水の役割をする用水路や下水溝が機能不全になり、少しずつ冠水が広がる「氾濫型の内水氾濫」。もうひとつは、排水先の河川の水位が上がり、街中の側溝や排水路に水が逆流して起きる「湛水型の内水氾濫」です。

3.土砂崩れ
がけ崩れ・地すべり・土石流など、長雨や集中豪雨などが原因で起きる土砂崩れは火災保険では水災で支払われますので、水害に含まれます。そういう意味では、洪水の危険の少ない高台に住んでいる場合でも「水害」のリスクはあります。

火災保険で水災は支払われるのか?

家を所有しているひとは、何らかの形で火災保険に加入されているのではないでしょうか。火災保険の基本は、火災、落雷、破裂・爆発を補償します。プラスして、風災、雹災、雪災の自然災害を補償するのが一般的な火災保険の基本の形です。

火災と自然災害の基本部分だけのシンプルなプランに加入している場合、水災は補償対象外になっています。「水災は自然災害に含まれるのでは?」と考えるひとが多いかもしれませんが、水災は独立した補償項目となっていますから、注意が必要です。近年水害が各地で起こっている状況をみれば、水災補償は必須項目といえます。現在の補償内容を確認してみましょう。

水害の場合、一旦水が引いてしまうと、家の形は特に壊れていない場合が多いです。しかし、浸水損害の修理は、損害を負った場所を修理するだけではありません。床や壁に断熱材が入った住宅の場合、断熱材を乾燥するところから始めなければなりません。修復までにはたくさんの時間と修理費用がかかることがあるため、水災の備えはとても重要です。また、修理にかかる損害保険金の他に、仮住まいの賃貸費用などを緊急費用として支払う特約などもあります。細かな特約のチェックもしておきましょう。

水災で保険金を払う定義を知っていますか?

水災の定義は、保険会社によって若干違いますので、詳しくは加入中の保険担当者に確認する必要はあります。次は水災の一般的な定義です。

台風、暴風雨、豪雨等による洪水・融雪洪水・高潮・土砂崩れ・落石等によって、保険の対象である建物に、
1.建物評価額の30%以上の損害が発生した場合
2.損害額が1の金額を超えていないけれど、床上浸水になってしまった場合
3.1.2どちらにも該当しないけれど、地盤面より45cmを超える浸水があり、損害を受けた場合

「いずれかに該当すれば、保険金を支払います」というものです。

どのような時に保険金を支払ってくれるのかを知らないで火災保険に入っていると、災害が起きた時にとても不安です。なるべく早く、保険の担当者またはサポートデスクに自分の保険はどうなっているのかを確認してみてください。

水災による損害額はどのくらい?

過去に、河川の氾濫により床上浸水になった事例では、建物2,000万円の火災保険で700万円の損害認定となり、全額支払いとなった事例があります。損害額700万円の他に事故時の諸費用として損害額の20%が支払われる特約が付帯されていたため、プラス140万円の費用が支払われています。また、修理期間中家賃8万円のアパートに2ヵ月済むことになりましたが、仮住まいの実費を払える特約が付帯されていたため、2か月分の家賃16万円の支払いもプラスされました。この火災保険には、家財保険を付帯していなかったため、プラスの費用は、使えなくなってしまった家財の購入費用などに充てることとなりました。

この例はほんの1例で、家の構造や水の上がり具合などによって、損害額は大きく変わります。水害は家の中の家財などのダメージもかなり大きくなりますので、建物だけでなく家財保険の補償も備えておいた方が安心です。

屋外設置の給湯器や燃料電池がある家は要注意

エコキュート(再生可能エネルギーを活用した給湯器)やエネファーム(家庭用のガスから水素を取り出して発電する、CO2を排出しないエネルギーを作る家庭用燃料電池)などを取り入れている住宅の場合、浸水の条件を満たさないのに、屋外に設置されている機械設備に水害で損害が出てしまうリスクがあります。基本の水災での支払いは対象外になりますが、このような損害を補償する特約を準備している商品もあります。自宅の状況に合わせた補償を設計していきましょう。

火災保険は多発する自然災害を受けて、保険料の改定をたびたび行っており、保険料は上昇傾向です。保険料を抑えるために、基本の部分だけでいいとしたいところかもしれませんが、家は生活の再建を支える礎です。いつ起きるかわからない災害の備えは、できる限りフルサポートでの加入をおすすめします。

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