「いろんな人に聴いてもらいたい」という強い思い
▲Adler:左から森田啓介(Gt.)、石河尚修(Vo, Gt.)、岡見知樹(Ba.)
──まずは今回のリリースについて。「君のゆくえ」は、これまでもライブで何度も披露していたわけですけど、「優しくしてよ」は完全新作としてのリリースでしたよね。それぞれの制作の経緯というか、そもそもAdlerって今どんな感じで曲作りしてるのかなっていうのも聞きたくて。
石河尚修(Vo, Gt.):曲作りは、まず僕がデモをドラムの打ち込みからギター、ベース、歌メロを入れて作って、最後に歌詞、みたいな感じで。デモのデータをメンバーに投げて、それぞれにアレンジしてもらうっていう感じでやっていて。それでスタジオで合わせて、お互いのアイデアを持ち寄って話し合って、最後にプリプロっていって、レコーディング前の最終チェックみたいな、音源の音合わせみたいなのをやってレコーディングに臨む、みたいな感じなんですけど。今回の「優しくしてよ」と「君のゆくえ」もそんな感じで作っていて、コンセプトとしては、一個のストーリーじゃないですけど、僕的には「君のゆくえ」は男の子目線で、「優しくしてよ」は女の子目線、みたいな感じで書いていて。そういうコンセプトのある音源を作ってみたいなと思って、今回作りました。
──なるほど。なんとなくストーリーが似てるなっていうのは感じてたので、それを聞いて納得しました。ちなみに、メンバーそれぞれで、今回の曲の中でこだわったところとかはありますか。
岡見知樹(Ba.):僕はライブではコーラスも担当してるんで、コーラスワークとかはけっこう意見出したりしましたね。「君のゆくえ」のサビのハミングとか、「優しくしてよ」のサビの森田との掛け合いとかは、こうしたほうがいいんじゃない、みたいな。
森田啓介(Gt.):今回の2曲は、最初にこういう曲を作るってコンセプトを聞いたときに、歌に焦点を合わせてわかりやすくっていうか、歌を聴きやすいようにって思ってて。フレーズとか音作りも含め、そのへんを意識して作ったって感じはありますね。それに延長して、歌詞にもちょっと意見を出し合ったりして。
──たしかに、ちょっと前までのAdlerって、ザ・ロックバンド! って感じの印象がすごく強かったんだけど、最近はだんだんメロディ感が強くなって、どんどん歌モノっていう感じになってきたなって思います。そのへんは、ナオくんの意識的にどんな感じですか。
石河:僕はやっぱり、いろんな人に聴いてもらいたいっていうのがすごくあるんで。日本人は歌詞を重視するから、今回は、このメロに対してこの歌詞が一番気持ちいいよねとか、この母音が一番気持ちいいよねみたいなのを、特に意識して書いた曲っていうのはあるかな。
──今回が4人になってからはじめてのリリースなんだっけ? 前回はまだリョウマくんが正規メンバーじゃなかったんだよね。(※Dr.サトウリョウマは2021年からサポートとして参加、2022年12月に正規メンバーとして加入する)
石河:そうですね、前作のEP『Remain』ではまだサポートでしたね。
──正式に4人になってから変わったことなんかはありますか。
石河:変わったこと……?(考え込む)
──特にないか(笑)。サポートとはいえ、ずっと一緒にやってきたもんね。
石河:まあ……2年くらい、ほぼメンバーみたいな感じだったんで、メンバー4人になったから自分たちの意識が大きく変わったみたいな、環境の変化が大きかったわけじゃないんですけど、周りからの、正規になってよかったねとか、一個のバンドとして見られてる、見られるようになったっていうのは、薄々感じてますね。
──そうだね、別にサポートが悪いわけじゃないけど、全員が正規メンバーって、見てるほうとしても安心感があるというか。これからAdlerがもっといい形になっていくといいなって思います。
自分たちを見つめ直す“凱戦”と、仲間と憧れに挑む“挑旋”
──そんなメンバーそれぞれの故郷を回り、挑戦もしていく、『凱戦と挑旋』ツアー……これ、タイトルめちゃくちゃかっこいいなと思って! 最初に見たときは「んっ?」ってなったんだけど、“せん”の漢字を入れ換えてるんだよね。これは誰の案だったの?
石河:最初、“凱旋と挑戦”っていうタイトルを考えたのが僕で。パッて閃いて、「“凱旋と挑戦”ツアーみたいなのどう?」みたいな感じで話して、じゃあフライヤー作って、って森田にお願いしたら、勝手に。
森田:(笑)
──勝手に…!?(笑)
岡見:そうだったの? 俺、そこ2人で話まとまってんのかと思ってたよ(笑)。
石河:いや、全然(笑)。
──めちゃくちゃおもしろいじゃん(笑)。
森田:でも俺、確認はしてるからね(笑)。こうするねって。
──森田くんにはどんな意図があったの?
石河:(バッサリと)ないでしょ。
森田:まあ、遊び心みたいな(笑)。
──なるほど(笑)。いやー、でも、なるほどなぁかっこいいなぁと思って。故郷を回るとはいえ、それぞれ自分たちが好きなバンドだったり、強いバンドを据えて戦いに行くわけじゃないですか。だから帰るっていうよりは、“凱戦”っていうこの字がすごく合うなって思って。
石河:たしかに。“挑旋”はちょっとよくわかんないっすけどね。挑んで回る(旋回する)みたいな、アタフタしちゃってる(笑)。
──あはははは!(笑) まあ挑戦っていっても、Adlerは東名阪とか、しょっちゅう全国を回ってるじゃないですか(笑)。普段から本当によくいろんなところへライブに行ってるわけだけど、自分たちのツアーで回るってなると、やっぱり違いってあったりしますか。
石河:そうですね……他のバンドのツアーに呼んでもらって県外へ行くことはけっこうあるんですけど、やっぱり自分たちのツアーだと、自分たちが看板だから。最終的に自分たちが締めなきゃいけないし、自分たちのライブで一日決まっちゃうし、その一日に対する責任感というか、自覚みたいな。そういうプレッシャーはけっこうありますね、一本一本。
──そんな中での上越、横浜、水戸はどうでしたか。
石河:初日の僕と森田の地元(新潟県上越市)はいい感じで、横浜もいい感じだったんですけど、水戸はちょっと……自分たちですごい、失敗というか、うまくいかなくて。直近のライブとかも含めて、けっこう自分たちで思うように行かなくて、自分たちのバンドの在り方というか、バンドに対する意識とか、日常生活から、そういうのを見つめ直すいい機会になって。そういう意味では、すごくいい“凱戦”編だったなって思いました。
──そうだったんだ……。いい感じで進んできたけど、最後に山が。
岡見:水戸のclub SONICは、けっこうハプニングの連続で…。僕が呼んだバンドが2組出演キャンセルになっちゃって、それでも、地元で出てくれたバンドたちがすごくいい一日を作ってくれたんですけど。なんていうかその、アンプがぶっ壊れちゃって、僕らのときに…(苦笑)。
──あぁ……!(※インタビュアーはAdlerのライブで不運な機材トラブルをよく目撃している)
岡見:で、もうバタバタしちゃって。だけど、地元のお客さんたちがめっちゃキラキラした目で見てくれて、改めて、ツアーに赴いてライブをするってことのプレッシャーみたいなのは感じるようになりましたね。
──他に、上越や横浜でも、印象に残ってることとかありますか。
森田:(食い気味に)上越の打ち上げがめっちゃ楽しかった。
石河:おまえ、そればっかりだな(笑)。上越EARTHは、僕と森田が高校生からずっとお世話になってるライブハウスだったんで。
岡見:なんか、好きなバンド、MOCKENとさよならユニバースを、僕らの大事なところに連れていきたいみたいな気持ちがめちゃくちゃあって。
森田:2バンドとも、東京とか福岡でやってるときに、上越EARTHを意識してくれてて。このツアーの前にも一回EARTHに出てくれてて、2回目、今度は俺らが呼びたいと思ってたから。
石河:1組、上越のバンドも出てくれたんですけど、森田の弟の友達のバンドが出てくれて。
──へぇー!
石河:なんかそれで、自分の高校生の頃のこととか思い出して、あったかい気持ちになったし。やっぱりここにちゃんと恩返ししたいなって思いましたね。
──じゃあ次は、Adlerが彼らの憧れになって、上越で盛り上がっていってくれたらいいよね。
石河:あとは横浜編?
岡見:F.A.Dは、ほんとにリョウマの独壇場。いい意味でね。
──あははは(笑)。すごく気合い入ってたもんね。
岡見:そうっすね、俺らはほんとにノータッチで。
石河:全バンドかっこよかったですね。そういう意味で、あったかいというよりは、もうバチバチ、みたいな感じで、キュッてなるっていうか。けっこう挑戦っぽい感じだったかも(笑)。
──そしてこれからまた“挑旋”編という形で(笑)。まずは大阪と名古屋ですけど。(※インタビューは“挑旋”編前に実施)
石河:“挑旋”編は、今までずっと名阪通ってきましたけど、自分たちのツアーでっていうのはすごく久しぶりなんで。
森田:1年ぶりだよね、ちょうど。
石河:だね。なんか、自分たちの大好きなバンドも含め、まじで挑戦というか、“凱戦”編を通して考えたこととか、一皮剥けて挑みたいなという感じですね。
──そしてツアーファイナル、下北沢SHELTERについてだけど。対バンがOCEANS、アルコサイトっていう、みんなからしたら先輩にあたるバンドだと思うんだけど、最近はけっこう対バンの機会が多くなってるんじゃないかなって思ってて。一緒にやるまでの印象と、今の印象っていうところではどうですか。
石河:OCEANSと初めて会ったのが、僕らがハタチのときとかで。それまでは、八王子で今キてる先輩、みたいな感じでずっと憧れてて。一緒にやるようになって、憧れから……なんだろうな、挑戦したい先輩、っていうか。もちろん尊敬もしてますし。アルコサイトも、音源はずっと聴いてたんですけど、はじめて会ったのが2年前で、すごく衝撃を受けて。そこから、OCEANSと同じになっちゃうんですけど、挑戦したい先輩になったというか。先輩は後輩よりかっこよくあってほしいっていうのも、たぶん全部わかってる人たちだし、それを、後輩が追っかけないとっていうか、ちゃんと喰らいついていかなきゃいけないっていうのもわかってる先輩だなって思ってて。
──なんというか、私の主観なんだけど。OCEANSもアルコサイトも、少し前までは、彼らが彼らのシーンの中で弟分的な立ち位置だったんじゃないかな。年齢的なものとか、地元でも上にすごい先輩たちがいて、っていうことで。だけどAdlerとか、みんなの世代が出てくるようになって、彼らもかっこいい先輩としての自覚、みたいなものが強くなったんじゃないかなと。
岡見:僕らが上京してきたときに、初めてOCEANSを見て衝撃を受けて。そのとき見たOCEANSの年齢に、今僕らがなってるんですよね。なんか、尊敬してた先輩と同じ歳になってたんだなーって思って。で、上京したての僕らと同じ歳の後輩もできてきたから、その後輩たちが僕らのライブを見てどう思うのかなーっていうのは、たしかに意識するようになりましたね。
石河:歴とか年齢とか、そういうものをステージでは関係ないっていう人もいるんですけど、僕はけっこう関係あると思っていて。そこの差は、どうしても超えることがないんですよ。でも、そういうものを超えたいって思えるのが、そういう垣根を超えたいって思えるのがバンドだと思うし。ステージで、上とか関係ない、とかじゃなくて、それをわかった上で、どう戦っていくかみたいな。それを意識してじゃないけど、いいライブをして、“Adlerのツアーファイナル”にしたいなと思ってます。
──そうだね。負けないって言い方もちょっと違うけど、“Adlerのツアーファイナル”に、OCEANSとアルコサイトをお迎えするっていう形で、しっかりやっていけたらいいよね。
9月には結成5周年、おもしろいことをしたい
──ちなみに、ツアーが終わったその先の予定とかは聞いたりしても…?
森田:(ぼそっと)ごしゅうねん。
石河:なんて?(笑)
全員:(笑)
石河:えっと、Adlerが9月15日に5周年で…。
岡見:5周年です、ってことだけ言っておきます!(笑)
石河:おもしろいことしたいなと思ってます。それだけ、ちょっとだけ!(笑)
──ありがとうございます!(笑) ナオくん、いろんな楽曲を作っていきたいって、前にツイートしてたじゃないですか。それこそ出会ったときから考えると、Adlerももうかなりいろんな楽曲ができたんじゃないかなって思うんだけど、そろそろアルバムとかも考えてたり…?
石河:アルバムはまだ考えてないんですけど、まとまった曲が入ってる…ってそれ言ったらもう一個しかないですけど(笑)。EPを、年末くらいに出せたらいいかなっていうのはありますね。
──楽しみにしてますね!