極東飯店の主催イベント『ELECTRIC HANTEN 80000V Part Ⅱ』@下北沢SHELTERでTransit My Youth、Subway Daydream、極東飯店がぶつけ合った三者三様の渾身パフォーマンス

下北沢を中心にフェスやサーキットに出演するなど、精力的に活動を展開している極東飯店の主催イベント『ELECTRIC HANTEN 80000V PartⅡ』が、6月25日(日)下北沢SHELTER、昼の部にて開催された。3月に行なわれたPartⅠから早3カ月、今回は大阪からTransit My Youthと、Subway Daydreamの2バンドを招いての全3組、各40分ステージ。オルタナティブやインディーロックなど、それぞれ多様なバックグラウンドをポップに昇華して独自のスタイルを作り上げている真っ只中の、三者三様なステージの様子をお届けします。

まず一番手は、5人組男女ツインボーカルバンド、Transit My Youth。「おはようございます! 大阪から来ましたTransit My Youthです!」と、Vo&Gt モリノの勢いのあるMCとともに「Bergkamp」、「Kidding Time」と、アッパーなパワーポップでステージを引っ張っていく。初期パンク感のある「Killing Time」のイントロのギターの音色で一転、クールに踊らせるダンサブルなサウンドを、さっきまで元気に飛び跳ねていたKey&Vo ポンタの妖艶さが引き立てる。

イントロのスクラッチのような音が印象的なミディアムテンポの新曲、「illegal babe」を披露し、クールダウンさせるようなまったりとした「怠惰と日々」など、多様な音楽ジャンルをしっかり踏襲している片鱗を見せつつも、ラストの「hipopo」では、キーボードを頭上に持ち上げるなど、終始ステージ上が狭そうな、パワーポップバンドらしいパワフルなステージを見せた。

続いて二番手は、先日、シンガポールの人気インディーポップバンド、Sobsの来日公演で共演を果たした、Subway Daydream。疾走感のある1曲目、「Freeway」のイントロで「よろしく下北沢!」とVo.たまみが言うと、双子のツインギター、藤島兄弟が前に出る。パワーのあるたまみの歌声でステージが明るくなる。ネオアコ調の「Timeless Melody」では、たまみがアコギを弾きながら伸びやかに歌う。と、ここでベースの男性が先程のTransit My YouthのBa.樋川にそっくりなことに気づく(なんとSubway Daydreamのサポートで2ステージぶっ続けでの出演だったそう!)。

華やかなイントロの「Teddy Bear」、音源ではもろマイブラの影響を感じさせる「Canna」のシューゲイザーな流れが心地よい。まったりとした曲でもブレずに安定したボーカルが曲を支えているのがよく分かる。アッパーなラスト、「New Day Rising」、「Radio Star」では、観客もクラップや拳を上げながら「Radio Star~♪」と応えるなど、ハッピーな2曲で盛り上がった。

そしてラストは、極東飯店。スタート直前にギターの弦が切れるアクシデントに見舞われるも、Vo&Gt いおんが「今日はありがとう。ちゃんと朝起きれた?」と先にMCで今日のお礼を述べる。準備が整い、SEとともにクラップで入場し、1曲目の「シュガー」。「みんなの好きな曲やります。なんでしょう? タトゥーを入れた」のコールからダンサブルな「タトゥーを入れた」へ。観客が拳を上げて応える。と、ここで「1曲追加します!」と、急遽予定外の「カンフースクワッド」を披露。一気にグランジなムードに包まれる。「サーフロックってジャンルが好きだからこの曲作ったんだよ。みんなも踊ってください」というMCからの「Mia, I’m readey」など、前2バンドに負けじと、多ジャンルな曲をぶつける。

3月のPartⅠに引き続き、今回も新曲「恐竜はダイナソー」を披露(前回は「シュガー」)。「“恐竜はダイナソー”っていう歌詞をメンバー全員に反対されたけど、プロデューサーの奥村大さん(wash?)だけは褒めてくれた」というエピソードも紹介された。「アンコールの予定調和感が恥ずかしくて嫌だ。焼き付けて帰ってください」と、アンコールはしないことを告げ、ラスト「92」では、Gt.土肥がフロアに下りて転げまわりながらギターを弾くなど、全力のパフォーマンスを見せた。

多様な音楽背景をポップに昇華して武器にすることの大胆さや力強さだけではなく、その難しさや葛藤といったようなものも垣間見えた気がした三者三様のステージだった。次回開催の発表はまだなかったが、MCで「またやりたい」と極東飯店のメンバーが言っていたし、どんな組み合わせが登場するのか今から楽しみだ。(Text:小野妙子 / Photo:岡 愛子)

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