市営住宅「新婚宣言」で家賃割引き 子育て世代流出の京都市が斬新アイデア

民間業者がリフォームを行い、若者や子育て世帯に貸し出しを行う市営住宅の空き部屋(京都市右京区・西京極市営住宅)

 住宅価格高騰による子育て世代の流出に悩む京都市が、全国初となる市営住宅の空き部屋活用に動きだした。不動産業者に部屋を貸し出してリフォームしてもらうことに加え、民間のアイデアで魅力的なプランを提供し、子育て世代の定住・移住を促すのが狙いだ。今月7日に公表された物件概要を見ると、「私たちは新婚です」と宣言すれば家賃が割り引かれたり、京都の有名雑貨店の家具付き部屋があったりするなど、およそ市営住宅とは思えないユニークな物件もあった。

■割安な「若者・子育て応援住宅」

 

 民間に貸し出される市営住宅の空き部屋は約40戸。「京都市若者・子育て応援住宅」と名付けられた。7日に公表された物件概要によると、家賃は周辺相場から2~3割安く、入居者に所得制限はない。市によると、こうした取り組みは全国に例がないという。

 第1弾の今回は西京極(右京区、8戸)や南烏丸(南区、7戸)など計35戸のほか、向島ニュータウン市営住宅9街区(伏見区)、洛西東竹の里市営住宅(西京区)、二条市営住宅(中京区)の一部。間取りは1LDK(40平方メートル)~3LDK(71平方メートル)で家賃は月4万円~9万5千円。早ければ秋に入居が始まる物件もある。

■「新婚割引」は自己申告でOK

 

 特長は、子育て世帯に注目されるよう工夫した家賃設定や間取りだ。洛西北福西(西京区)と西京極(右京区)などの住宅を改修する万殿建設(西京区)は2LDK(約60平方メートル)の家賃を5万円に設定。さらに子ども1人につき3千円を値引きし、新婚世帯は家賃が5%オフになる。「新婚」の定義は「あくまで自己申告」(同社担当者)で、結婚年数は問わないとのこと。つまり、いつまでも新婚気分の家庭は家賃が安くなるという、公務員では思いつかないアイデアだ。

 同社は「各団地とも高齢化が進んでおり、改修をきっかけに若い人に住んでもらい地域を活性化してほしい。そういう思いから新婚向けプランを用意した」と明かす。

 ほかにも、子どもの成長に合わせて間取りが変更できたり、ベビーカー置き場など大型収納を備えたりする物件のほか、京都の雑貨販売店「イノブン」とコラボしたオリジナル家具付きの部屋などもある。

■気になる入居条件は・・

 入居条件は、50歳未満の世帯か18歳以下の子どもがいる世帯。事実婚や同性でパートナーシップ宣言をした世帯も対象になる。物件の申し込み先はリフォームを請け負った民間事業者になる。本年度は約70戸を改修する予定で、市住宅管理課は「手ごろな家賃で子育て世代に使い勝手のよい住宅がそろった。市外への転居を考えている世帯に、京都にとどまる選択肢の一つにしてほしい」としている。各社のプランや連絡先は市のホームページで紹介している。

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