アニメで描かれる酪農の世界 東京の現状は? 農家の日常描く「百姓貴族」放送開始

農家の日常をコミカルに描き、農作業の大変さをはじめ農業知識も得ることができるアニメ「百姓貴族」の放送がTOKYO MXで7月からスタートし、いま生産者の間で話題を呼んでいます。アニメ放送初回のテーマは「牛乳」。東京の酪農の現状を取材しました。

「現在我が国の食料自給率はわずか38%」―日本の農家の厳しい現実をとらえながらも、笑いを交えながら農業を応援するアニメ「百姓貴族」の放送が7月からスタートしました。

作者は、アニメや映画にもなった北海道の農業高校を舞台にした漫画「銀の匙」で知られる荒川弘さんで、初回のテーマは食卓に欠かせない牛乳が取り上げられました。

アニメは農家に生まれ、漫画家になるまでの7年間、酪農と農業に従事していた荒川さんの実体験をもとに描かれています。酪農を営む生産者は、アニメのエピソードをどのようにとらえているのでしょうか。

「まさにその通りだよね。実際にやったことがある人じゃないと分からないような部分が結構出てきたので、1つ1つ納得してました」

こう答えたのは、日野市にある百草ファームで20年以上に渡り乳牛を飼育している大木聡さん。17頭の乳牛から朝夕あわせて約480リットルの牛乳を毎日生産しています。アニメのエピソードは日々、乳牛たちと向き合う生産者にも共感を得ていました。

「(牛乳の味の決め手は?)偏った餌をあげないことかな。いろんな意味でバランスが取れた餌をあげたほうが、牛乳の味にも反映されると思いますね」

百草ファームではとうもろこしなどで作られた配合飼料のほか、乳酸発酵させた麦芽粕に牧草、自社の水田でできた稲わらを餌で与えています。

「食卓へおいしい牛乳を届けたい」その思いで懸命に乳牛を育てる一方、現在はウクライナ情勢による穀物価格の上昇により、厳しい経営が続いているといいます。

「ほとんどが餌代で乳代が持っていかれちゃいますから、生活費が出ないんですよね。(餌代を)削るってことはケチることですよね。そうすると今度牛の方に影響がでてくるから、私はとにかく餌はケチらないで高くてもいいものをしっかりあげる」

健康な牛を育てることで余計なコストをかけずに、おいしい牛乳を長く届けることができると力強く語ってくれました。

「作業をしていても、前を通る人が「東京牛乳飲んでますよ、いつもおいしいですよね」って言ってくれるんですよ。こんな励みになることはないですもんね。もうまたそれでガーンとやる気が湧きますよね」

アニメの放送をきっかけに、酪農や農業を知ってもらえたらうれしいと話してくれた大木さん。アニメは生産者の思いも、届けています。

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