「全部考えたとおりになった」オーバーテイク連発の平川亮。最終周の最終コーナーでは“罠”も/第6戦決勝

 スーパーフォーミュラ第6戦富士スピードウェイの予選でまさかのQ1敗退、20番手からのスタートとなった平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。これには、予選日午前中のフリープラクティスにおいて「セットアップを間違えていた」ことが影響していた。

 ただ、その土曜フリー走行でのマシンの状態は決して悪いものではなく、「SF23のヒントがあったかも」と平川は振り返っている。

 そのときの好感触は、決勝が始まると再現されていた。「ここまでいいとは思っていなかった。予想外の良さでした」と平川は振り返る。

■「100点」のレースで“強さ”を取り戻す

 1周目で4つポジションを上げた平川は、その後も次々を前車をオーバーテイク。ピットウインドウが開く直前の9周目には10番手にまでポジションを上げてきていた。

 ここからライバル勢のルーティンピットが始まっても、平川はステイアウト。幸い、平川の前方にはクリーンエアの空間が広がっていた。徐々に暫定首位を走る山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)へと追いついていったが、約3秒後ろに迫ったタイミングで山本がピットイン。平川は誰にも邪魔されることなく自らのパフォーマンスを出し切れる状態で、“表の1位”を爆走した。

 全車のなかでもっとも遅らせたピットインは、41周のレースの30周目。その判断は「結構難しかった」と平川は言う。

「乗っていると裏の状況が分からないのですが、そこを聞きながら……。あれよりも引っ張ると、(最終的に)4位まで上がれるチャンスはなかったと思うので、タイミングは良かったと思います」

 残り11周、ピットアウトした平川の眼前では、山本が野尻智紀(TEAM MUGEN)を攻め立てていた。フレッシュタイヤの平川は33周目のホームストレート前半部で野尻を、37周目に同じ形で山本を、40周目のTGRコーナーで太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)を次々とパスしていった。

 38周目にはファステストラップもマーク。そんな状況でも、平川の頭の中は極めて冷静だった。

「どこで抜こう、って前の周くらいに決めて、それが全部ハマって。考えたとおりになったので『こんなことあっていいのかな』という感じでした」と平川。

 40周目の最終パナソニックコーナーでは佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)を一度パスするも、最終ラップに入るストレートでは一度抜き返される。それでも平川には、再び最終コーナー進入で“罠”を仕掛ける余裕があった。

 一度アウトから並びかけた平川に呼応するように佐藤はインを閉めたが、ライン取りがタイトになり、その隙にクロスラインをかけた平川が開いたインから佐藤をパスして最終コーナーを立ち上がり、フィニッシュラインまで逃げ切ったのだ。

「もうタイヤの差が激しかったので、どう足掻かれても絶対前にいけるという自信はありました。相手をうまくハメて、立ち上がりで難しいラインを取らせる……と考え、ああいう形になりました」

 これにより、平川は16ポジションアップとなる4位で第6戦を終えることになった。

 昨年までの平川は、このような決勝での強さが度々目立っていた。シャシーがSF23へと進化し、タイヤスペックも変更された今季は、持ち前の強さが削がれてしまった印象が前半戦では強かったが、ここへ来てその長所が再び光りを放ち始めたとも言える。

「今日は100点ですね。スタートも良かったし、(1コーナーへの)位置どりもうまくいったし、オーバーテイクも一回もミスせず、全部一回で仕留めましたし、ピットストップももちろん良かったし、すべて完璧なレースだったと思います」

 ランキングでは首位から50ポイント差と、タイトル獲得の芽はほぼ無くなってしまってはいるが、この第6戦を機に強さを取り戻した平川が、終盤戦で台風の目となる可能性は充分にありそうだ。

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