16年ぶり念願の繰り出し 日光・文挟の彫刻屋台

彫刻屋台を引く地域住民

 日光市文挟町でこのほど、同所の八坂神社「例大祭」の宵祭りが行われ、16年ぶりに市指定有形文化財の彫刻屋台が繰り出された。地域住民約70人が力を合わせ、荘厳な屋台を引き回した。

 屋台は1882年ごろの作とされる。以前は分解した状態で保存し、繰り出しのたびに約70人の大人が1日がかりで組み立てていたが、徐々に人手不足となり、2007年を最後に実施されなくなっていた。

 伝統が途絶えることを危惧した地域住民は20年、市から土地の無償譲渡を受け、屋台の収納蔵を建設。13年ぶりに屋台を組み立て、繰り出し再開の機運が高まったが、新型コロナウイルス禍のため延期していた。

 おはやし隊を乗せた屋台は午後5時、心待ちにした住民らに見守られ繰り出しに出発。拍子木の合図で向きを調整しながら進んだ。90度の方向転換のため、法被姿の参加者が息を合わせて屋台を回転させると、観客から拍手が起こった。

 参加した落合東小4年原子心鈴(はらこみすず)さん(10)は「大きくてすごかった。重かったけど来年もやってみたい」と笑顔で話した。

 同町氏子総代長の福田六合二(ふくだくにじ)さん(73)は「予想より多くの人が参加してくれた。間が空いたことでノウハウが途切れ苦労もあったが、実施できてよかった」と感慨深げに話した。

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