半導体の九州集積に期待 ソニー長崎TEC長・馬場孝巨さん 人材育成へ連携を

「イメージセンサーは産業として成長が期待される」と語る馬場さん=諫早市、長崎TEC

 人工知能(AI)や自動運転などデジタル社会を支える半導体を巡り、九州で投資が活発化している。世界的シェアを誇るソニーグループ傘下のソニーセミコンダクタマニュファクチャリングもその一つ。人の網膜の役割を果たす半導体「CMOS(シーモス)イメージセンサー」のスマートフォンカメラ向け生産拠点である同社長崎テクノロジーセンター(長崎TEC、諫早市津久葉町)の馬場孝巨センター長(59)に市場動向や九州集積への期待、課題などを聞いた。 

 -半導体市場の動きは。
 2022年度は景気悪化でスマホ市場は低迷し、イメージセンサーの市場在庫も高止まりした。そうした中、スマホ向けイメージセンサーは、光を取り込む開口が大きくて高画質を実現できる大判化のトレンドにあり、高級機種市場は比較的堅調だった。中位機種の領域もその傾向にある。
 -生産拠点としての本県の優位性は。
 半導体生産に欠かせない水資源が諫早市は豊富。高速道路や空港にも近い。本県は優秀な学生が多く、長崎の地で先端の技術開発・生産という世界レベルの仕事に携われること、ソニーの半導体事業の魅力をしっかりと伝えていくことが大事だと思っている。
 -ソニーグループは5月、次期中期(24~26年度)のイメージセンサー事業設備投資額について、今中期(21~23年度)と同程度の約9千億円を見込んでいることを明らかにした。イメージセンサーの世界シェア(金額ベース)は22年度の51%から25年度には60%を達成するとの目標を示した。長崎TECのさらなる拡張の可能性は。
 昨年着工したFab(ファブ)5(5棟目工場)の拡張工事は今年秋に完了予定で、生産エリアのクリーンルームは完成する。箱物はこれ以上、大きくならないが、今後は数年先の需要動向を慎重に見極めながら設備を入れ、キャパシティー(生産力)を上げていくことになる。長崎TECのキャパシティー増強も含めて、全体として今中期と同程度の投資を想定している。
 -半導体受託製造の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が第2工場も熊本県に建設する意向を明らかにするなど、半導体関連の九州集積が加速している。期待や課題は。
 TSMCの進出はある意味、新しい風を吹き込んでいる。われわれが生産している積層型イメージセンサーに必要な(コンピューターの頭脳となる)ロジック半導体の安定供給につながる。
 ものづくりを支える「人」「もの」「金」「知恵」の九州への集積が、半導体事業の成長を促してくれる要因になることを期待している。大事なのは(半導体事業に携わる)人材育成という視点。個々の企業だけで対応できることは限界があり、産業界として政府や(地元の)大学、研究機関などとの連携を一層促進していく動きを取っていかなければならないと感じる。
 イメージセンサーは今、さまざまな産業、分野で活用されている。いろいろな多様性があり、これからも成長が期待される。

 【略歴】ばば・たかお 長崎市出身。長崎大工学部卒。87年、ソニー長崎入社。ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング製造技術部門部門長を経て、21年4月から現職。


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