故郷・八丈島に捧げる畑中葉子の新曲配信 方言をラップで再現 コナン映画で話題の島

今年、歌手生活45周年を迎えた畑中葉子(64)が生まれ故郷である伊豆諸島の八丈島(東京都八丈町)をモチーフとした新曲「八丈島からの手紙」(ディスクユニオン)を19日に配信リリースする。八丈島といえば、4月に公開されてヒットしたアニメ映画「名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)」の舞台となったことで、ファンが〝聖地巡礼〟に訪れるなど新たな注目スポットになっている。畑中がよろず~ニュースの取材に対し、島の魅力や新曲にかける思いを語った。

八丈島で生まれ、13歳まで過ごした。1978年、作曲家・平尾昌晃さん(2017年死去、享年79)とのデュエット曲「カナダからの手紙」で歌手デビュー。大ヒットして紅白歌合戦にも出場した。ソロ歌手として「後から前から」(80年)がヒット。女優としても活躍したが、90年代以降は二児の母として育児に専念し、2010年代から芸能活動を再開。先鋭的なミュージシャンらとコラボしたセルフカバーのアルバムなどを次々にリリースし、昨年10月には37年ぶりとなるシングル曲「夜雲影」を配信リリースした。

今回、なぜ八丈島だったのか。畑中は「45周年記念曲は昨年出した『夜雲影』にして、今年は記念品としてデビュー曲にちなんだ名前の『八丈島からの手紙』という焼酎を作ろうとしていたんですが、そこに時間をかけるなら曲を作った方がいいと。気力と体力があるうちにと、八丈島に貢献できる曲を作りました」と明かす。双子のラッパー・上鈴木兄弟、さいとうりょうじ(ギター&作曲)の3人で構成するユニット「P.O.P」とのコラボ作品となった。

「サビ部分を作詞作曲しました。掃除しながら降ってきたメロディーを録音して、さいとうさんに採譜していただいた。(曲調は)海を感じさせるソフトなタッチのレゲエで、そこに八丈島の民謡『ショメ節』も入っています。ショメ節は島の人たちが寄り合いで、自分たちが歌詞を作ってメロディーに乗せていくスタイル。また、八丈島の方言を少し入れました。絶滅危惧種になっている言葉を後世に残したいと」

随所に散りばめられた「島ことば」。英語のフレーズを感じさせる「あんどうのう」は「構わないよ、そんなこと」といったニュアンスの言葉。さらに「おじゃりやれよ(いらしてね)」、「いりんなっきゃ(いらない))」、「よっけじゃのう(いいよね)」といった言葉がメロディーとビートに乗る。

八丈島の人口は現在約7000人だが、畑中が過ごしていた時代は約1万人の町だった。どのような少女時代を島で過ごしたのか。

「空を眺めて天の川を見たり、鬼ごっこをして遊んだり。夏休みになると、観光客がたくさん来られるので、若い女性が海中に落とした髪飾りを潜って取ってあげのが楽しかった。八丈太鼓も習いました。楽しみは芸能人の方も来られる8月のお盆のお祭りでした」

同じ東京都でも、島から本土に渡る交通手段は飛行機だった。「羽田空港まで1時間かからない。天気が良ければ30分くらいで着いてしまう。船だと東京の竹芝を夜出て、朝着く(約10時間)。私は乗り物酔いするので、船より飛行機で、歯の矯正や中学の夏季講習などで東京に行った。中学2年になる時に父の仕事の関係で東京に引っ越しました」

それから約半世紀。離れて感じる八丈島気質も新曲で表現した。

「八丈島の人は、おせっかいしに来ない。でも、こちらから話しかけてみると温かい。そこが、昔の流人にも喜ばれたのかもしれません。八丈島の流人はご赦免になって喜ぶが、恋仲になった島の娘がとてもつらい思いをするという話もあって、歌詞に盛り込みました」

5月に現地で撮影したMVでは島ならではの風景や特産物が紹介される。海岸沿いの坂道、八丈太鼓、バーベキュー、4種類の焼酎、牛のいる牧場…。どんより曇った空が雨の多い土地柄を示している。

「町長さんにもロケハン時にご挨拶して、八丈島空港の観光カウンターや、船着き場などで新曲を流してくれるというご連絡をいただきました。八丈島に行くと、どこかで聴けるようになるとのことで、実現すればうれしいです。私が作詞した部分にある『愛だけがあれば』というフレーズ、それが伝えたかったことの全てです。名声や肩書き、お金じゃなく、根本は愛でしょ…ということを、人情の深い島の人たちと一緒に聴いていただければ」

八丈島では、空港、底土港(八丈島の北東部に位置する小型船のための船着場)、観光協会事務所の3か所に設置しているデジタルサイネージで「八丈島からの手紙」のMVが19日から放映される。いずれも島の〝玄関口〟だ。畑中の歌声が故郷に響くことになる。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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