実は大事な就業規則、チェックしておかないとリスクになることも。見ておくべきポイントは?

会社員の皆様、自分が働く会社の就業規則を見たことはありますか?筆者は仕事柄「これっていいの?」「こういう場合ってどうなの?」などしばしば尋ねられるのですが、多くの方は就業規則を見ていないのです。たしかに、難しい言葉使いの数十ページにおよぶ就業規則を全て読んで理解するのは現実的ではないかもしれませんね。今回は、そもそも就業規則とは何なのか、そして、就業規則で見るべきポイントを解説していきます。


就業規則は会社の憲法みたいなもの

私たちが暮らす日本には、日本国憲法がありますよね。この憲法は国の「最高法規」であると、社会科の授業で教わった方も多いのではないでしょうか。実は、就業規則とは、それぞれの会社にとっての憲法みたいなものなのです。しばしば「労働契約書に書いていない」との主張を耳にするのですが、個別の労働契約よりも就業規則の方が効力は上。就業規則は、ご自身が勤務する会社の最高法規ということになります。

この就業規則には、会社と従業員のルールが書かれており、両者ともに守らなければなりません。会社が作成するものなので、会社側にとって都合の良いように作られているのでは?と考える人もいるかもしれません。例えば、1日10時間労働と就業規則に記載したとしても、その場合は労働基準法で定められた1日8時間労働に読み替えることとなり、条件は良くなります。ですから、労働基準法の方が強力です。

ご自身が働く支店や店舗などに常時10名以上働いている場合は、会社は就業規則を作成し、従業員に配布したり紙やデータを備え付けたり、従業員が自由に閲覧できることになっています。常時10人未満が働く職場の場合は就業規則ナシでも法律上OKです。
作成したら、会社は労働組合や会社が決めた代表の従業員から意見を聞くことになっていますが、従業員側から意見聴取をする機会があったことすら知らない人がほとんどだと思います。

慶弔休暇ナシは法律上OKです

いざ、就業規則を見てみよう!と思い、多くの方が真っ先に探すのが、慶弔休暇などの特別休暇の記載です。家族が亡くなった場合や結婚した場合の休暇日数などが書かれていますね。「少ない」「ひどい」などの声が聞こえてくるのですが、実は、慶弔休暇などというルールは法律上定める必要は一切ありません。慶弔休暇ゼロであってもブラック企業でも何でもないのです。ですから、慶弔休暇の意味合いは法律的なことではなく、福利厚生の要素が強いものです。

慶弔休暇に日数を定めていたとしても、「無給」ということは法律上OKなので大いにあり得ますし、特に厳しい会社ということはありません。これは、休暇を取得すれば、労働する必要はないけれど休んだ日数分の給料は出ないということです。その場合はご自身の有給休暇がどのくらい残っているかが重要になるでしょう。休暇を見る場合のポイントは、休暇のバラエティーや日数よりむしろ有給か無給かという点なのです。

自分のタイプやライフプランを見据えてチェックする

何か具体的な出来事がない段階であれば、就業規則を見ても眺めるだけになるのも無理はありません。その場合、自分のタイプやライフプランを考えてみましょう。例えば、「定年退職までこの会社にいるとは思えないな」という場合は、退職に関する項目を探します。何日以内に誰に届ける、退職金(別規程になっている場合が多い)はどうなのか、早期離職の場合に返還義務はあるのか、などの記載が気になってくるはずです。

フリーランスになるケースを含め起業も視野に入れている場合は、ライバルになり得るので、顧客情報についての管理や競業について記載があるかもしれません。SNSなどを活用することが得意であるとか、興味を持っている人は、情報漏洩やSNSの利用に関するルールを確認しておくべきです。仕事時間中のスマホ使用について書かれている可能性もあります。

副業をしたいなら、副業に対する会社の考え方や届出について確認しなくてはなりません。副業NGという就業規則はまだまだ存在します。オシャレやファッションにこだわりを持っている人もいるでしょう。そういったルールを定めている就業規則もあり得ます。その場合、多少の我慢も必要かもしれませんね。

自分や家族の健康状態、育児や介護が気がかりという方は、休業や休職に関する規程、育児と介護については、別規程を設けている会社も多いのでそちらを探しましょう。休職に関しては、留学や進学などのスキルアップで認めている会社も存在します。社内でしっかり頑張っていこうと考えている場合は、手当や昇給に嬉しい規程があれば、モチベーションにも繋がりますね。部署異動や転勤が気がかりな人は、どのような人事異動があるのかを確認したいところでしょう。

いかがでしょうか? このように、自分自身は元々どんなタイプか?どんな会社人生を送りたいのか?家族や生き方など将来の希望は?などを思い浮かべて、該当する項目をチェックしてみると、就業規則の見え方も変わってくるはずです。

かなり重要なことが書かれた就業規則

会社から給料をもらって生きていく以上、どうしても完全に自由というわけにはいきません。会社での出来事を写真や動画付きでSNSに投稿して解雇事由に該当してしまったケースも存在します。逆に、もう会社を辞めなきゃいけないかもしれない、という場面で休職規程に救われて復帰を果たすことができた、ということもあるのです。具体的な出来事の際に確認するのはもちろんですが、「これってどうなの?」などと思った時や、前述したように自分を見極めて拾い読みしてみるのも良いと思います。

会社側も労働基準法をはじめとした法律に従う必要はありますが、その上で円満に業務を遂行していくためにお互いに守っていこうというルールを定められた就業規則。あまり読まれていないのが現実ですが、実は、会社員にとってかなり重要なことが書かれています。

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