合体の余波が残る”しし座”の不規則銀河 ハッブル宇宙望遠鏡が撮影

こちらは「しし座」の方向約2500万光年先にある不規則銀河「NGC 3239」です。1966年に天文学者のホルトン・アープがまとめた特異銀河(特異な形態を持つ銀河)のカタログ「アープ・アトラス」には「Arp 263」として収録されています。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された不規則銀河「NGC 3239」(Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Dalcanton, A. Filippenko)】

不規則銀河とは、星々が集まった中心部や渦巻腕(渦状腕)、回転対称の円盤部のような、明確な構造を持たない銀河のこと。欧州宇宙機関(ESA)によれば、NGC 3239は2つの銀河が合体して新たに誕生した銀河であり、その不規則な外観は合体の影響によるものだと考えられています。あちこちに分布するピンク色の斑点は、新たな星が形成されている星形成領域の場所を示しています。

この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)」の「広視野カメラ3(WFC3)」と「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」で取得したデータをもとに作成されました。ESAによると、WFC3による観測は最近超新星が発生した場所を観測する取り組みの一環として2021年2月に実施されました。NGC 3239では2012年1月に超新星「SN 2012A」が見つかっています。

またACSによる観測は、アープ・アトラスに収録されている銀河を対象として、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)」やハッブル宇宙望遠鏡自身による将来の詳細な観測の対象になり得る銀河を探す取り組みの一環として2022年12月に実施されたということです。

ちなみに画像の中央付近で明るく輝いているのは、約580光年先にある天の川銀河の恒星「BD+17 2217」です。この星から十字形に伸びた針状の光は回折スパイク(diffraction spike)と呼ばれるもので、ハッブル宇宙望遠鏡の副鏡を支えるスパイダー(梁)によって生じています。

冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の今週の画像として、ESAから2023年7月17日付で公開されています。

Source

  • Image Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Dalcanton, A. Filippenko
  • ESA/Hubble \- Starstruck image of Arp 263

文/sorae編集部

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