3度目の

 早起きのメリットは「三文」、仏の顔は「三度まで」。思わぬアイデアが生まれるのは「三人寄れば文殊の知恵」、ツラい仕事や修業も我慢が大切と説くのは「石の上にも三年」で、そこを何とか-と要請を重ねるのは「三顧の礼」▲「3」が登場する慣用句やことわざは数多い。裁判の三審制や野球の3アウトで攻守交代も何か同じ影響を受けているのではと実は真剣に疑ったことがある▲長さや大きさが勝手に伸び縮みしている感じも「3」の魅力なのかもしれない。同じ3分間でもウルトラマンの活動時間は“ほんの少し”の代表例だが、カップラーメンの3分は「よりおいしく食べてもらうために、じっと待たせる時間」と聞いたことがある▲前置きが長くなった。諫早市出身の作家、垣根涼介さんの「極楽征夷大将軍」が第169回直木賞に選ばれた。「室町無頼」「信長の原理」に続く3回目のノミネートで射止めた直木賞。三度目の正直-と呼んでもいいだろうか、ここまでの歩みをどんなふうに振り返っているだろうか▲受賞作の主人公は室町幕府を開いた足利尊氏。〈やる気も使命感も執着もない人物〉が頂点に立ったのはなぜか…▲県内の書店や書店員の皆さんも受賞に沸いているはずだ。活気づく売り場-“リアル書店派”はそこがうれしい。(智) 

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