R&Aトップが賞金の上昇傾向に警鐘 オイルマネーで「世界変わった」

キャメロン・スミス(右)はR&Aのマーティン・スランバーズ氏にクラレットジャグを返還した(Richard Heathcote/R&A via Getty Images)

◇メジャー最終戦◇全英オープン 事前(19日)◇ロイヤルリバプール(イングランド)◇7383yd(パー71)

大会を主催するR&Aの最高責任者マーティン・スランバーズ氏が19日、プロゴルフ界における賞金の過度な増額傾向に警鐘を鳴らした。昨年開幕した新リーグ「LIVゴルフ」を支援し、PGAツアーとの合意にも踏み出したPIF(パブリック・インベストメント・ファンド)をはじめとする、スポーツ界でのオイルマネーが及ぼす影響力の大きさを肌で感じている。

151回目を迎える今年、全英オープンは賞金総額1650万ドル(約23億472万円)を用意した。前年比20%増の大会史上最高額だが、2000万ドル(約27億9360万円)の「全米オープン」を筆頭にする4大メジャーでは最も低い。“第5のメジャー”「ザ・プレーヤーズ選手権」は2500万ドル(約34億9200万円)を誇り、PGAツアーも高額賞金シリーズのLIVからの選手引き抜きの対抗策として、競うように増額を進めている。

前回ロイヤルリバプールで行われた2014年大会と比べると、全英の賞金も3倍以上に膨れ上がった。「男子プロゴルフの賞金は我々の計画以上に増額スピードが急速に上がっている」とスランバーズ氏は明かす。プロスポーツはいまや中東社会の優良投資先。「世界は昨年、大きく変化した。ゴルフだけではなく、サッカーもF1も、クリケットだって同じことが言える。テニスだって他人ごとではない」とアスリートを取り巻く環境の変化を指摘した。

R&Aトップは「全英オープン(ジ・オープン)」の名称を守ることへの意欲を示しながらも、大会をバックアップする企業への門戸は閉じない姿勢。その上で、「急速な賞金アップはプロゴルフのビジネスモデルにおける再評価そのものだが、ゴルフを統括する身としては、ゴルフの普及活動への投資とのバランスを取らなくてはならない」と、トーナメントへの過度な賞金増額による懸念点も挙げた。

「全英オープンの賞金を確保するだけでなく、草の根活動やエリートアマチュアにプロゴルフへの道をひらくことも必要。プロアマを問わず、女子ゴルフの反映はさらに重要だ。財政面では短期的な解決策を模索するだけでなく、長期的なアプローチも欠かせない」とゴルフの持続可能性に言及した。(イングランド・ホイレイク/桂川洋一)

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