血液中の糖の一種「マンノース」に抗がん作用 慶応大先端研などメカニズム発見

 慶応大先端生命科学研究所(鶴岡市)などの研究グループは19日、血液に含まれる糖の一種「マンノース」が、抗がん剤「シスプラチン」の治療効果を高める際のメカニズムを発見したと発表した。マンノースががん細胞の増殖に必要な物質供給を阻害し、がん細胞の薬剤耐性を発揮しにくくしていた。新たな薬剤開発などにより、抗がん剤治療時の副作用の低減につながる可能性があるという。

 細胞はDNA上にあらかじめ準備された無数の起点から増殖する。平常時に使用される起点は全体の10%程度とされる。シスプラチンが投与された場合、がん細胞は残りの90%が活性化して増殖を続けるため、次第に抗がん剤が効きにくくなる。シスプラチンは副作用が強いため、治療効果を高めて投与量を減らすことが課題となっていた。

 研究グループは培養細胞を使った実験で、マンノースが抗がん作用を発揮するには、がん細胞内の特定の酵素を欠損させた上で、多量に投与する必要があることを発見した。がん細胞の増殖を止める原因を探るため、メタボローム(代謝物質)解析をしたところ、マンノースが細胞増殖に必要な物質(DNAを構成する塩基)の生成を阻害していることを突き止めた。

 毒性の高いマンノースを増やしすぎると人体に影響を及ぼす危険性があり、治療への応用には至っていない。先端研の平山明由准教授は今回の研究成果について「マンノースと同じ機能を持つ別の物質の探索などに役立つ可能性がある」と語った。大阪国際がんセンター研究所などとの共同研究で、成果は18日付で国際学術誌「eLife」に掲載された。

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