「生まれることは希望」 原爆詩「生ましめんかな」を現代美術作品に 作家が ”あのとき生まれた赤ちゃん” と対面

原爆投下後の地下室を舞台にした原爆詩「生ましめんかな」をもとに、現代美術の作品を作ったアーティストが、平和公園を訪れました。アーティストは、詩のモデルとなった被爆者とも対面しました。

チリ出身でニューヨーク在住のアーティスト、アルフレド・ジャーさんです。「生ましめんかな」の原爆詩をもとに作品を作りました。

ジャーさんは、広島市が平和を発信するアーティストに贈る「ヒロシマ賞」を受賞し、22日から個展を開くため来日しました。

待っていたのは「生ましめんかな」のモデルとなった被爆者の 小嶋和子 さん。2人はこれが初対面です。

原爆詩人・栗原貞子 さんの代表作「生ましめんかな」は、原爆投下後の地下室で居合わせた助産師の助けで、1人の赤ちゃんが生まれる実話をもとにした詩です。

「生ましめんかな」栗原貞子(抜粋)
『私が産婆です、私が生ませましょう
と言ったのは さっきまでうめいていた重傷者だ
かくてくらがりの地獄の底で新しい生命は生まれた
かくてあかつきを待たず産婆は血まみれのまま死んだ
生ましめんかな 生ましめんかな 己が命捨つとも』

このときに誕生した ”赤ちゃん” が、小嶋さんでした。

詩を読んだジャーさんは、「生まれること」への希望を込めて作品を作りました。

アーティスト アルフレド・ジャーさん(67)
「惨状の中でも新たな命の誕生は希望です。私のプロジェクトの方向も定まりました。(小嶋さんに)会えてうれしい。『生ましめんかな』は小嶋さんそのもの。作品は新たな命・将来への希望を表しています」

「生ましめんかな」のモデル 被爆者 小嶋和子 さん(77)
「こういう機会をいただいて、あらためて慰霊碑をお参りして本当に感激です」

ジャーさんの個展は「ヒロシマ賞」の受賞を記念して開かれるもので、22日(土)から広島市の現代美術館で始まります。「生ましめんかな」を題材にした作品など、全部で9点が展示されます。初日の22日(土)は、ジャーさん本人が作品について語るトーク会もあるということです。

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