市営住宅の女性刺殺、被告「取り返しの付かないことを…」 改めて無罪訴え結審

京都地裁

 京都市下京区の市営住宅で2020年10月、住人の女性が刺殺された事件で、殺人などの罪に問われた無職戸塚那生(なおき)被告(23)の裁判員裁判の論告求刑公判が20日、京都地裁(川上宏裁判長)であった。検察側は「強固な殺意に基づく残忍な犯行」として懲役20年を求刑。弁護側は改めて無罪を訴え、結審した。判決は8月8日。

 起訴状などによると、20年10月6日夜~7日夜、下京区河原町通塩小路下ルの市営住宅の一室で、住人のアルバイト女性=当時(24)=の胸や首、顔面などを折りたたみナイフで複数回突き刺し、殺害したとしている。

 これまでの公判で、戸塚被告は「死なせたことは事実だが、女性がナイフで襲いかかってきた」と述べ、正当防衛が成立すると訴えていた。

 検察側は論告で、遺体には多数の傷口があったことなどから「極めて強い殺意を持って一方的かつ執拗(しつよう)に刺した」と指摘。女性がナイフを振り回した状況はなく、正当防衛を否定した上で、「落ち度のない被害者への責任転嫁に終始している」と非難した。

 弁護側は、女性が馬乗りになってナイフを突き出してきたとし、「生命に対する差し迫った危険があった」と強調。事件当日が初対面だった女性を殺害する理由も見当たらないなどと主張した。

 戸塚被告は最終意見陳述で「取り返しの付かないことをしてしまった」と述べた。

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