香港禁輸の回避要請 処理水 茨城県知事、国に「説得を」

記者会見する大井川和彦知事=県庁

大井川和彦知事は20日の定例記者会見で、東京電力福島第1原発の処理水が海洋放出されれば茨城県を含む10都県の水産物の輸入を禁止するとの香港政府の方針について、「特定の事業者には大きな影響が出る可能性もある。政府に粘り強い説得をお願いしたい」と述べ、輸入禁止とならないよう政府に対応を求める考えを示した。

香港政府は12日、処理水が海洋放出されれば「10都県の水産物を輸入禁止とする」と発表した。香港は日本の農産物輸出にとって巨大市場で、規制が強化されれば漁業者らへの打撃が懸念されている。

大井川知事は「(茨城県の)水産物の輸出先として、香港の比率は高くなく、限定的な影響にとどまる」との見方を示す一方、水産加工業など特定の事業者には「大きな影響が出る可能性もある」と述べた。

影響があった場合は、風評被害の一環として「国が支援をするのが当然の前提となる」と話し、政府による支援を求めた。同時に、こうした事態が起きないよう「科学的な根拠に基づいた対応となるよう、香港への粘り強い説得をお願いしたい」と述べた。

県漁政課によると、2021年の茨城県水産物の輸出額は68億8800万円で、このうち香港は全体の1%に当たる7400万円。主にタコやイカの加工品など計約47トンが輸出された。

香港への輸出は2014年に始まり、商談会での現地バイヤーへの売り込みなどから、輸出額は徐々に増えている。

処理水を巡っては、海洋放出計画に反発する中国が今月、日本の輸入海産物に対する全面的な放射線検査を始めた。茨城県を含む10都県については、福島第1原発事故を受け、これまでに水産物を含む食品や飼料の輸入を停止している。

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