源氏物語の書き写しに挑戦 「プレーボーイが女性ひっかける」イメージはどう変貌した

中院家の書体を忠実に書き写している千葉さん(亀岡市千代川町)

 京都府亀岡市千代川町の千葉直秋さん(82)は書道教室を開く傍ら、「源氏物語」の江戸時代前期の写本の書き写しに3年前から挑戦している。「何帖まで完成させることができるかは分からないけれど、平安時代の物語の情景を思い浮かべながら書くのが楽しい」と笑顔を見せる。

 元にしているのは公家・中院(なかのいん)家の写本で、全54帖計2542ページに及ぶ。京都大のデジタルアーカイブで公開されており、筆遣いをじっくりと観察して忠実に再現する。1日10ページほど進め、7月時点で、12帖計725ページを完成させた。「当時の口語で書かれているので、最初は全く読めなかった。今では文字のくせが分かってきて大体は読めるようになった」という。

 書と出合ったのは26歳の時で、同僚に誘われて職場近くの仮名習字の教室に入った。上達して先生に褒められるのがうれしくてのめり込んだ。「千葉秋鳳(しゅうほう)」の雅号で書道展に出展するほか、商品ラベルのロゴ制作にも携わってきた。12年ほど前からは、亀岡市の千代川町自治会館(同町)やガレリアかめおか(余部町)などで教室も開いている。

 「プレーボーイの兄ちゃんがいろんな女性をひっかける」イメージしかなかった源氏物語に興味を持ったのは3年前、物語を京ことばで読み聞かせるイベントを主催する俳優・山下智子さんとの出会いがきっかけだった。中院家の写本を教えてもらい「自分が習ってきてた字体によく似ている」と感じた。書の練習になりそうと取り組み始めた。

 作品は、亀岡市内で不定期に開かれる山下さんの朗読イベントの会場で展示している。当面の目標は、41帖「幻」まで完成させること。「できれば全て完成させたい。だが話は長大で、私もこの年なので…」と苦笑いする。

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