沖縄・玉城デニー知事 「平和へ 対話の努力を」 厳しい安保環境 “新しい戦前”に警鐘

安全保障などへの考え方が異なっていても「平和や豊かな未来につながるのであれば、対話する努力を惜しむべきではない」と強調する玉城沖縄県知事=長崎市茂里町、長崎新聞社

 長崎を訪れた沖縄県の玉城デニー知事が長崎新聞の取材に応じた。過重な米軍基地負担や南西諸島への自衛隊駐屯地の開設が進む沖縄。同様に米軍や自衛隊の基地がある佐世保市は「基地との共存共生」を掲げている。玉城知事は、安全保障などへの考え方が異なっていても「平和や豊かな未来につながるのであれば、対話する努力を惜しむべきではない」と強調した。
 長崎県佐世保市と沖縄では、米軍基地を巡る認識に違いがある。沖縄では住民が暮らす地域の近くで訓練があり、事件事故などが多発している問題を挙げ「どのような生活環境に置かれているかは、基地に対する感情と非常に近い(関係)」と述べた。
 沖縄での軍備増強の現状については「米軍基地の負担軽減とあわせて考えるべきだ」とし、多くの県民は配備により「新たな攻撃目標になってはいけないと訴え続けている」と強調。その上で「本来は平和外交にもっと重点を置き、日ごろからカウンターパート(連携相手)同士の意思疎通の積み重ねが大事だ」と指摘した。
 昨年12月には「安保関連3文書」に反撃能力(敵基地攻撃能力)保有が明記され、転換期を迎えている。政府に対し「国民にしっかりと説明することが必要」と苦言を呈した。
 同じ沖縄県内でも「(米軍基地の)影響が大きいところと、影響があまりないところとでは(考えが)全然違う」という。本県も長崎市と佐世保市で安保を巡る認識に違いが見られ「似ているところがあるのは理解できる」と指摘した。ただ、原爆の惨禍は長崎と広島のみが経験しており「(原爆は)人類にとって重要なテーマだ」と強調した。
 近年では、アジア太平洋地域の「厳しい安全保障環境」が取り沙汰されている。こうした状況へ対処すべきだとの声が強まり、それに同調しない声への反発が大きくなると「“新しい戦前”になってしまう」と警鐘を鳴らす。「身近に戦争や原爆で苦しんだ人々がいるはず。私たちには『二度とそんな社会にしてはいけない』と発信する責任があると、堂々と伝えるべきだ」と語気を強めた。

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