<社説>人間国宝に2氏 文化継承の功績たたえる

 沖縄から新たに2人の「人間国宝」が誕生する。国の文化審議会は、「首里の織物」の祝嶺恭子さん、「琉球古典音楽」の大湾清之さんを国指定重要無形文化財保持者(各個認定)として答申した。「首里の織物」では2人目、「琉球古典音楽」では4人目の認定である。 「人間国宝」は、重要無形文化財に指定された芸能や工芸技術を高度に体現・体得している人に贈られる称号である。今回、指定を受ける2人はそれぞれの道で沖縄文化の継承発展に尽くしてきた。研究活動を通じて、戦災などによって失われつつあった技術や伝統芸の復活にも尽くした。その功績をたたえ、県民と共に喜びたい。

 「首里の織物」は琉球王国時代から育まれてきた伝統的染織技法であり、中国や東南アジア諸国から影響を受けながら首里で独自の発展を遂げてきた。女子美術大学で学び、染織作家の柳悦孝氏に師事した祝嶺さんは首里の織物の制作方法を高度に体得した染織作家として活躍してきた。

 沖縄の染織品の調査にも精力的に取り組んできた。中でもベルリン国立民族学博物館所蔵の染織品を調査した経験を踏まえ、沖縄戦で失われた琉球染織品を再現するなど、沖縄の染織技術の継承・発展で画期的な功績を残した。

 「琉球古典音楽」は琉球の士族が中心となり継承し、技を磨き上げ、現在に伝えられてきた。歌三線は古典音楽の中心として多くの人々を魅了してきた。大湾さんは10代で野村流三線演奏家の父・大湾清之助氏に師事し、古典音楽の道を歩み出した。その後、安冨祖流の歌三線を宮里春行氏、笛を大浜長栄氏に師事し、研さんに励んできた。

 琉球古典音楽の理論的研究にも取り組んだ。安冨祖流で昭和初期まで演奏され、沖縄戦などの影響で伝承が途絶えていた「仲節」「長ヂャンナ節」の復曲を成し遂げた。

 伝統の再現・復活に並んで祝嶺さん、大湾さんに共通しているのは、指導者として人材育成に努めたことである。

 首里高校で染織を指導した経験のある祝嶺さんは1986年の県立芸大開学時から美術工芸学部の助教授・教授となり、若い染織家を育ててきた。大湾さんも2006年から音楽学部助教授・教授として古典音楽の継承者育成に力を注いできたのである。若い染織家、演奏家は2人を目標に研さんを重ねてほしい。

 今回、人間国宝として答申された2人は自身の技能を磨き、研究活動を通じて伝統芸の復活・継承に尽くしてきた。さらには公的教育機関の指導者として人材を育ててきた。いずれも沖縄の伝統文化の継承発展には欠かせない。

 沖縄の「人間国宝」指定は今回の2人で17人目となる。独自の歴史と風土に育まれた伝統文化と、その継承発展に尽くしてきた人々を誇りにしながら、その活動を県民挙げて支えていきたい。

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