芦屋の住宅地を下る大型車、止まってブレーキ冷やして! フェード現象で事故続発、5年で6件以上

2021年8月に起きた大型トラックの事故(読者提供、画像の一部を加工しています)

■交通安全対策を求め署名4927筆、住民が県に提出

 六甲山から兵庫県芦屋市内に下る県道奥山精道線で「フェード現象」による交通事故が多発している。芦屋署によると、過去5年間で少なくとも6件起きており、ダンプカーが民家に突っ込んだ事故もあった。犠牲者は出ていないものの、「誰かが亡くなってからでは遅い」と周辺住民らが任意団体「ライト坂の交通安全対策を求める会」を設立。21日、県に署名4927筆と陳情書を提出した。同会の石村亜希子代表(48)は「注意看板などだけでなく、有効な交通規制も検討してほしい」と訴えた。(村上貴浩、山岸洋介)

 事故は同市奥池南町の有料道路「芦有ドライブウェイ」の芦屋ゲートから、東芦屋町の開森橋交差点までの約4キロで多発。この区間の一部は地元住民からライト坂と呼ばれている。高低差があり山間部では急カーブが続き、住宅街に入っても急な下り坂が続く。途中の歩道は山手小学校や甲南中学校などの通学路となっているが、大型トラックなどの交通量は多い。

 今年5月、同交差点で、県道を下ってきたトラックが信号待ちをしていた軽ワゴン車に衝突。荷台に積んでいた小型のショベルカーを落とし、交差点の先の歩道に突っ込み、ベンチやバス停を壊した。

 大きなけがを負った人はいなかったが「たまたま歩道に人がいなかっただけ。もし通学時間に事故が起きていたらと思うと恐怖しかない」と石村さん。

 芦屋署によると、他にも大型トラックがガードレールに衝突したり、トラックが標識にぶつかったりと、2019年以降、少なくとも7件の事故があり、捜査中の1件を除く6件の原因がフェード現象によるブレーキトラブルだった。

 ライト坂では以前にも同様の事故が起きており、地域住民や付近の小学校の保護者らが県や市に改善を求めてきた。「ブレーキ過熱事故多発!!」と書かれた看板を設置するなどの対策がとられたが、根本的な解決にはつながっていない。

 今年6月、住民女性が山手町町内会を訪ね「これ以上事故を放置できない。署名活動をしてほしい」と依頼してきた。町内会が小学校で活動するコミュニティ・スクールなどと「ライト坂の-」を結成し、署名活動を始めた。今月14日夕には、阪急電鉄芦屋川駅北側でも実施。子どもを含む約20人が参加し「僕たちの通学路の安全を守ってください」と声を上げた。

 21日に提出した陳情書では、ブレーキの過熱状態の確認の義務化▽下り坂でのエンジンブレーキ使用の啓発▽注意看板の増設-などを求めた。石村さんは「事故が起きる原因は分かっているので、犠牲者が出る前に抜本的な対策をしてほしい」と訴えている。

【フェード現象】下り坂が続く道でフットブレーキを連続して使い過ぎることにより、ブレーキパッドなどが高温になって摩擦を生む部分が分解され、ブレーキが利かなくなる状態。特に大型のトラックなどで起きやすい。エンジンブレーキなどを活用することで防ぐことができる。最近では2022年10月、静岡県の県道で観光バスが横転して1人が死亡、28人が重軽傷を負う事故があった。フェード現象が原因とみられている。

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