7月21日から公式走行プログラムが始まったGTワールドチャレンジ・アジア第4ラウンド。モビリティリゾートもてぎは昨年のカレンダーには含まれておらず、普段日本国内でのレースに参戦していないドライバーのなかには、このレースウイークが初のもてぎ走行となったドライバーも多かった。
とくにプロ/アマクラスにエントリーする陣営には、欧州マニュファクチャラーのワークス(ファクトリー)ドライバー、ないしはそれに近いポジションのトップドライバーたちが送り込まれており、彼ら“世界トップのGT使い”たちがもてぎをどう感じたか、どう攻略するのか気になるところ。
ここでは、ヨーロッパを中心にGT3等のレース参戦経験が豊富な3人のドライバーに、モビリティリゾートもてぎの印象を聞いてみた(※取材は21日金曜に実施。なお、前日の木曜日にはペイド・プラクティスセッションも行われていた)。
■「とてもクールなコース」とDTM王者
まずは、長年メルセデスAMGのドライバーとして活躍している、ドイツ人のマキシミリアン・ゲーツに話を聞いてみよう。ゲーツは2021年のDTMドイツ・ツーリングカー王者で、スパ24時間レースでも2度の優勝経験を持つ。今季のGTWCアジアには、クラフト・バンブー・レーシングの85号車メルセデスAMG GT3 EVOで参戦している。
「もてぎに来るのは初めてだけど、映像ではたくさん見てきたんだ」と37歳のゲーツ。日本のレースにも、興味があるようだ。
「GT500、GT300、そしてインディカーの映像なんかをね。ここはとてもヒストリックなトラックだけど、僕らヨーロッパ人にとっては、なかなか来る機会のない場所だった。だから、今回はここに来られてとてもクールだよ」
■「アメリカにありそうなコース」。終盤にはオーバーテイク可能?
最後は27歳、ノルウェー国籍のデニス・オルセンにもてぎの印象を聞こう。オルセンはハコ車でのキャリアをポルシェ・カレラカップ/スーパーカップからスタートさせており、その後もポルシェのGT車両をドライブしてル・マン24時間、デイトナ24時間などに参戦。2022年はSSRパフォーマンスから、2023年はマンタイEMAからDTMに参戦している。
GTWCアジアにはR&Bレーシングの4号車ポルシェ911 GT3 Rから参戦するオルセンは、富士ラウンドでは2戦連続で表彰台に登ったものの、先週の鈴鹿戦には出場していなかった。ただ、ストルツと同様にニュルブルクリンクでのテストを終えてから、もてぎ入りしたという。
「もてぎは一度、iRacingでは走ったけど、とても忙しいスケジュールだったので、今回のレースウイーク直前にはできなかったんだ」とオルセン。
木曜に初めて実際に走ったもてぎについて、オルセンは「とてもオールドファッションなトラックだね」と表現している。
「トラックリミット(違反)に関して、大きな問題がないのはとてもいい。ミスをしたドライバーには、サンドトラップに埋まるか、ウォールに当たるという制裁が待っている。それは良いことだと思う」
「ドライバーにとってもっともチャレンジングな区間は、ターン12から14にかけての最終セクションだね」
オルセンにも、もてぎのレイアウトに似ているサーキットを聞いてみると、「うーん……ヨーロッパにはないんじゃないかな」との答え。
「どちらかというと、アメリカにありそうなコースだ……たとえば、ワトキンス・グレンはちょっと似ているかな。広い(舗装された)ランオフエリアはないし、いくつかの中速コーナーがある。そういう意味では、アメリカのコースみたいだよね」
レースでのオーバーテイクの難しさについて予想を聞くと、オルセンは次のように答えている。
「オーバーテイクができないとは思わないよ。ただ、『抜かれないように守る』こともうまくできるサーキットだね。もし後ろのクルマをブロックしたければ、そのための正しい場所に自分のクルマを置くことは簡単だ。それがオーバーテイクを難しくはさせる」
「ただ、それと同時にこのピレリタイヤを履くGT3車両は、レースでのタイヤの摩耗もとても多い。だから、とりわけレースの終盤にはオーバーテイクが可能になると思うんだ」
果たして、国内では「抜きづらい」とも形容されがちなもてぎで、彼らはどんな走りを見せてくれるのか。初めて対峙するコースの攻略と合わせ、決勝での“レース運び”も、今週末の見どころのひとつとなりそうだ。